破産法三六六条ノ四第一項の破産者の審訊についての規定並びに同法三六六条ノ八の破産者及び異議申立人の意見の聴取についての規定は、憲法三二条に違反しない。
破産法三六六条ノ四第一項及び三六六条ノ八の各規定と憲法三二条
憲法32条,破産法366条ノ4第1項,破産法366条ノ8
判旨
破産免責制度は誠実な破産者に対する特典として経済的更生を目的とするものであり、その裁判は本質的に非訟事件の性質を有する。したがって、公開の法廷における対審を経ない免責手続は、憲法32条に違反しない。
問題の所在(論点)
破産法上の免責手続(非公開の審訊等による判断)が、憲法32条の保障する「裁判を受ける権利」に違反しないか。免責裁判の法的性質が問題となる。
規範
破産免責制度の趣旨は、誠実な破産者に対する特典として、配当しきれなかった債務を免除し、その更生を図ることにある。また、免責の裁判は、当事者の実体的権利義務の存否を確定する「純然たる訴訟事件」ではなく、その性質は本質的に「非訟事件」についての裁判である。ゆえに、公開の法廷における対審(憲法82条1項)を憲法32条が保障する範囲で要求するものではない。
重要事実
抗告人(債権者側)は、破産法上の免責規定が財産権(憲法29条)を侵害すると主張した。また、裁判所が審訊により免責決定を行い、異議申立人の意見を聴くにとどまる手続(旧破産法366条ノ4、同366条ノ8等)は、詐欺破産等の事実について債権者の証言等による立証機会を奪うものであり、裁判を受ける権利(憲法32条)に違反すると主張して抗告した。
事件番号: 昭和36(ク)101 / 裁判年月日: 昭和36年12月13日 / 結論: 棄却
破産法の免責規定は憲法第二九条に違反しない。
あてはめ
免責の裁判は、債権者の権利を実体的に消滅させる側面はあるものの、国家が後見的見地から破産者の更生を助けるという「非訟事件」の性質を有する。非訟事件については、訴訟事件のような対審構造や公開原則が憲法上必須とされるわけではない。本件において、破産裁判所が審訊手続を用い、異議申立人の意見を聴く手続構成は、非訟事件の性質に照らし合理的な裁量の範囲内といえる。したがって、証言等の機会が制限されているとしても憲法32条の趣旨には反しない。
結論
破産法における免責手続の規定は、憲法32条に違反しない。また、免責制度自体も憲法29条に違反しない。
実務上の射程
破産手続や免責手続における不服申立ての場面で、手続的保障の程度を論じる際に活用する。特に、権利の存否を確定する『訴訟的側面』と、合目的的な形成を行う『非訟的側面』の区別を示す際に、本判決の「非訟事件性」の論理は、現行破産法下でも基本原理として通用する。
事件番号: 昭和33(ク)357 / 裁判年月日: 昭和33年12月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告に対して裁判権を有するのは、法律により特に最高裁への抗告が許容されている場合に限られる。不変期間経過後になされた不適法な抗告を棄却した原審の判断に憲法違反の主張があっても、前提を欠く場合は最高裁への抗告事由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原審に対して抗告を申…
事件番号: 昭和33(ク)262 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許された場合に限られ、民事事件においては民事訴訟法(旧法)419条の2所定の憲法違反等がある場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人は、憲法違反を理由として最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容は、実質的には単…
事件番号: 昭和26(ク)200 / 裁判年月日: 昭和26年12月3日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては憲法違反を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が、下級審の決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた事案。抗告人は、原決定に法律等の憲法適合性に関する判断の不…
事件番号: 昭和47(ク)216 / 裁判年月日: 昭和47年9月7日 / 結論: 棄却
忌避を申し立てられた裁判官が退官したことを理由とし、忌避申立を利益がないとして却下した決定は、申立の実質的理由につき判断を示さなかつたからといつて、憲法三二条に違反するものではない。