破産法の免責規定は憲法第二九条に違反しない。
破産法の免責規定の合憲性。
憲法29条,破産法366条ノ2,破産法366条ノ9,破産法366条ノ12
判旨
破産法の免責規定は、破産者の経済的再起を図るという公共の福祉に基づく合理的な制限であり、債権者の財産権を侵害するものではないため、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
破産法における免責規定は、債権者の有する財産権を不当に侵害するものであり、憲法29条に違反するか。
規範
財産権の制限が憲法29条に違反するか否かは、その制限が「公共の福祉」のため、必要かつ合理的な範囲に留まるかによって判断される。破産法上の免責制度については、誠実な破産者の経済的再起と更生を図るという目的の正当性と、免責不許可事由や非免責債権の設定による効力範囲の限定という手段の合理性が考慮される。
重要事実
抗告人らは、旧破産法の免責規定(366条ノ9等)により破産債権者の債権が消滅することは、債権者の財産権を不当に侵害するものであり、憲法29条各項に違反すると主張して抗告した。事案の具体的な債権内容等の詳細は判決文からは不明であるが、憲法適合性が争点となった事案である。
あてはめ
事件番号: 昭和33(ク)262 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許された場合に限られ、民事事件においては民事訴訟法(旧法)419条の2所定の憲法違反等がある場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人は、憲法違反を理由として最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容は、実質的には単…
まず、免責制度は誠実な破産者の経済的再起を目的としており、破産者の「人間に値する生活を営む権利」を保障する社会的必要性がある。次に、旧破産法366条ノ9が詐欺破産等の不信行為がある場合に免責を不許可とし、同法366条ノ12が租税等の特殊な債権を非免責としている点は、免責の範囲を合理的に規制したものといえる。また、免責を認めなければ債務者が隠匿等を行い、かえって債権者を害するおそれがあることから、免責は債権者にとっても最悪の事態を避ける意義がある。以上から、債権者の犠牲と破産者の更生という利益を衡平に考慮すれば、本規定は公共の福祉による必要かつ合理的な制限といえる。
結論
破産法の免責規定は憲法29条に違反しない。したがって、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
財産権の制限に関する「公共の福祉による合理的な制限」という合憲性判定枠組みを示すリーディングケースである。答案上は、破産法のみならず、私法上の権利を制限する特別法の合憲性が問われた際、目的の正当性と手段の合理性(範囲の限定等)を論証する際の基礎として用いることができる。
事件番号: 昭和23(ク)36 / 裁判年月日: 昭和23年12月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への再抗告は、憲法違反を理由とする場合、または訴訟法において特に認められた場合に限定される。それ以外の理由による抗告は、不適法として却下されるべきである。 第1 事案の概要:抗告人は、下級裁判所がなした決定または命令に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、当該抗告の理由は憲法違反を…
事件番号: 平成2(ク)127 / 裁判年月日: 平成3年2月21日 / 結論: 却下
破産法三六六条ノ四第一項の破産者の審訊についての規定並びに同法三六六条ノ八の破産者及び異議申立人の意見の聴取についての規定は、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和33(ク)357 / 裁判年月日: 昭和33年12月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告に対して裁判権を有するのは、法律により特に最高裁への抗告が許容されている場合に限られる。不変期間経過後になされた不適法な抗告を棄却した原審の判断に憲法違反の主張があっても、前提を欠く場合は最高裁への抗告事由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原審に対して抗告を申…
事件番号: 昭和34(ク)172 / 裁判年月日: 昭和34年6月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特別に許容された場合に限られ、民事事件においては旧民事訴訟法419条の2(現行336条相当)所定の特別抗告のみが認められる。適法な違憲の主張を具体的に示さず、単なる事実誤認や手続違背を主張する抗告は、特別抗告の要件を欠き不適法である。 第1 事案…