漁業生産組合が、毎月、その事業に従事する組合員に対し、労務の提供の程度に応じて支払う報酬は、労働の対償である賃金と認めるのが相当である。
漁業生産組合が毎月その事業に従事する組合員に対し労務の提供の程度に応じて支払う報酬の法的性質
水産業協同組合法85条,労働基準法11条
判旨
漁業生産組合の組合員や理事が組合の事業に従事して受ける報酬は、形式的には共同経営者としての利益分配であっても、その実態が雇用関係に基づく労働と異ならない場合は、労働基準法上の賃金に該当する。賃金に該当する場合、支払猶予の合意は労働基準法24条に違反し無効となる。
問題の所在(論点)
漁業生産組合の組合員兼理事が、組合の事業に従事した対価として受ける報酬が、労働基準法上の「賃金」に該当するか。また、賃金に該当する場合、労働者と使用者間の支払猶予の合意は有効か。
規範
漁業生産組合の組合員が労務の提供に応じて毎月受ける報酬は、形式上は協同事業者としての成果分配であっても、事業従事の実態が雇用関係に基づく一般の労働と異ならないのであれば、実質的には労働の対償たる「賃金」(労働基準法11条)に当たる。また、理事が役員報酬とは別に労務提供に応じた報酬を受けている場合も、同様に実質的な賃金と解するのが相当であり、これが賃金に該当する場合、その支払猶予の合意は賃金全額払の原則(同法24条1項)に違反し無効となる。
重要事実
漁業生産組合である被上告人の組合員かつ理事であった上告人は、船頭(漁撈長)や一般漁夫として組合の漁業に従事していた。被上告人は上告人に対し、役員報酬とは別に、船頭等としての稼働に対し毎月一定額の報酬を支払っていたが、一部が未払となった。上告人がこの未払金の支払を求めたところ、被上告人は、本件報酬は利益分配の性質を有し賃金ではないこと、および支払猶予の合意があることを主張して争った。なお、上告人は雇用保険の被保険者とされ、休業期には失業給付を受けていた。
あてはめ
上告人の報酬は、年度当初に月額で定められ、実労働日数に応じて計算されるものであり、労務提供の程度に比例して支払われていた。また、上告人は理事としては役員会に出席するにとどまる一方、実態としては雇用保険に加入し失業給付を受けるなど、一般の労働者と同様の形態で労務を提供していたといえる。したがって、本件報酬は単なる経営利益の分配ではなく、実質的に労働の対償たる賃金としての性質を有する。このように賃金にあたる以上、その支払を猶予する合意は、賃金の全額を直接労働者に支払わなければならないとする労働基準法24条に抵触し、無効であると解される。
結論
本件報酬は実質的に労働基準法上の賃金に該当する。したがって、支払猶予の合意は同法24条に違反し無効であり、被上告人は未払分の支払義務を免れない。
実務上の射程
形式上は組合員(出資者)や役員であっても、その稼働実態が「使用従属性」を推認させる労働者的なものであれば、労基法による保護が及ぶことを示した判例。答案上は、労働者性や賃金該当性を肯定した上で、全額払原則(24条1項)違反による合意の無効を導く文脈で使用する。
事件番号: 昭和42(オ)461 / 裁判年月日: 昭和43年9月3日 / 結論: 破棄差戻
株式会社の取締役が、会社の使用人たる地位を兼ね、会社から使用人としての給料の支払を受ける場合には、右給料の支払につき取締役会の承認を受けなければならない。