網元またはその代理人の指揮下にあつて曳子を指揮監督し、曳子の全責任者として魚獲作業に従事するいわゆる網廻し労務に対する報酬金債権は、民法第一七四条第二号所定の労力者の賃金債権にあたらない。
いわゆる網廻し労務に対する報酬金債権と短期消滅時効。
民法174条2号
判旨
民法174条2号(旧法)にいう「労力者の賃金」とは、雇主との間に従属的関係にあり、かつ主として肉体的労力を提供する者の債権を指し、指揮監督権限を有する責任者の労務はこれに当たらない。
問題の所在(論点)
漁獲作業において他の作業員を指揮監督する責任者の賃金債権が、民法174条2号(旧法)にいう「労力者の賃金」に該当し、1年の短期消滅時効にかかるか。
規範
民法174条2号(旧法)所定の「労力者」とは、雇主と従属的な関係に立ち、かつ、主として肉体的労力を提供する者をいうと解すべきである。
重要事実
本件における債務の目的たる労務は、いわゆる「網廻し」と呼ばれるものであった。これは網元またはその代理人の指揮下にありつつも、実際には曳子を指揮監督し、曳子の全責任者として従事する漁獲作業であった。
あてはめ
本件の「網廻し」としての労務は、曳子を指揮監督する立場にあり、作業全体について責任を負うものである。このような地位にある者は、単に雇主の個別的な指示に従って肉体労働に従事する一般の作業員(曳子)とは異なり、雇主との間に完全な従属的関係があるとはいえず、また、その提供する労務も主として肉体的労力を提供するものとは認められない。
結論
本件債権は民法174条2号(旧法)所定の債権に当たらないため、1年の短期消滅時効は適用されず、消滅時効の抗弁は排斥される。
実務上の射程
本判決は旧法の短期消滅時効に関するものであるが、職業別の短期消滅時効が廃止された現行民法下においても、特定の職業的地位や労務の性質を判断する際の指標(従属性・肉体労働性)として、類推適用や他の法領域での概念解釈に資する可能性がある。
事件番号: 昭和26(オ)302 / 裁判年月日: 昭和29年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】条件の成就によって利益を受けるべき者が、相手方の妨害によってその条件の成就を妨げられたと主張して損害賠償を請求する場合、相手方が故意に条件の成就を妨げたという事実が認められない限り、当該請求は認められない。 第1 事案の概要:上告人(報酬請求権者)は、被上告人との間で特定の条件が成就した場合に報酬…