当事者が損害賠償の額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これをしんしゃくすべきである。
当事者が損害賠償の額を予定した場合における過失相殺の可否
民法418条,民法420条1項
判旨
損害賠償額の予定がある場合でも、債務不履行につき債権者に過失が認められるときは、特段の事情のない限り、裁判所は過失相殺(民法418条)により賠償額を減額すべきである。
問題の所在(論点)
民法420条1項に基づき損害賠償額が予定されている場合において、裁判所は同法418条(過失相殺)を適用して、予定された賠償額を減額することができるか。
規範
当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合であっても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌(過失相殺)すべきものと解する。
重要事実
債務者(被上告人)の工事遅延を理由として、債権者(上告人)が損害賠償額の予定に基づき工事遅滞損害金の支払を求めた事案。原審は、当該遅延という債務不履行に関して、債権者側にも一定の過失があることを認定した。
事件番号: 平成16(受)519 / 裁判年月日: 平成18年4月14日 / 結論: 破棄自判
本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許される。
あてはめ
本件において、工事遅滞損害金という損害賠償額の予定がなされているが、原審が適法に確定した事実関係によれば、当該遅滞につき債権者側(上告人側)にも過失が認められる。損害賠償額の予定は損害の立証を免除する趣旨であっても、債権者に過失がある場合にまで全額の賠償を強制するものではないため、過失相殺の規定を適用して予定額の3割を減額した原審の判断は正当である。
結論
損害賠償額の予定がある場合でも過失相殺は可能であり、債権者側の過失を考慮して予定額を減額した原判決の判断は維持される。
実務上の射程
損害賠償額の予定がある場合、裁判所は原則として増減できない(民法420条1項後段)が、過失相殺については別異に解し、418条の適用を肯定した点に実務上の重要性がある。答案作成上は、損害賠償額の予定の抗弁に対する再抗弁(ないし再々抗弁)の文脈で、過失相殺の主張を検討する際に活用すべき判例である。
事件番号: 昭和32(オ)226 / 裁判年月日: 昭和34年11月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】債務不履行に基づく損害賠償請求において、過失相殺(民法418条)を適用するためには、債権者に帰責されるべき具体的な過失事実が認められなければならず、単なる事情の指摘のみで直ちに過失と断定することは許されない。 第1 事案の概要:上告人(債権者)が被上告人(債務者)に対し、債務不履行に基づく損害賠償…
事件番号: 昭和56(オ)767 / 裁判年月日: 昭和57年10月19日 / 結論: 棄却
民法七二四条所定の三年の時効期間の計算においては、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知つた時が午前零時でない限り、時効期間の初日を算入すべきではない。
事件番号: 平成7(オ)160 / 裁判年月日: 平成11年4月22日 / 結論: その他
甲と乙とが乗車中の自動二輪車の交通事故により死亡した甲の相続人が,捜査機関が甲を運転者と認定したことを知りながら,乙を運転者と主張して乙に対して損害賠償請求訴訟を提起した場合であっても,右主張に沿う事故直前の目撃者らの供述があり,現場の状況,自動二輪車の損傷状況などの客観的証拠からは運転者を特定することが必ずしも容易で…
事件番号: 平成21(受)1539 / 裁判年月日: 平成22年7月9日 / 結論: 破棄差戻
本訴の提起が不法行為に当たることを理由とする反訴について,本訴に係る請求原因事実と相反することとなる本訴原告自らが行った事実を積極的に認定しながら,本訴原告において記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをしていたことなどの事情について認定説示することなく,本訴の提起が不法行為に当たることを否定した原審の判断には,違法があ…