民法七二四条所定の三年の時効期間の計算においては、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知つた時が午前零時でない限り、時効期間の初日を算入すべきではない。
民法七二四条所定の三年の時効期間の計算と初日の不算入
民法138条,民法140条,民法724条
判旨
不法行為による損害賠償請求権の短期消滅時効(民法724条)の起算点には初日不算入の原則(同法140条)が適用され、また一部請求である旨を明示しない反訴の提起は、損害賠償請求権の全部について時効中断(現・更新)の効力を生じさせる。
問題の所在(論点)
1. 不法行為の消滅時効期間(民法724条)の計算において、民法140条の初日不算入の原則が適用されるか。2. 一部請求である旨を明示しない反訴の提起は、損害賠償請求権の全部について時効中断の効果を生じさせるか。
規範
1. 民法724条(現724条1号)所定の3年の時効期間は、損害及び加害者を知った時が午前零時でない限り、民法140条に基づき初日を算入しない。2. 訴えの提起が一部請求に当たらない限り、その提起によって生じる時効中断(現・時効の更新)の効力は、債権の全部に及ぶ。
重要事実
被上告人(反訴原告)は、上告人(反訴被告)に対し、不法行為に基づく損害賠償請求の反訴を提起した。この際、被上告人は請求の趣旨において、自己の損害賠償請求権の一部についてのみ判決を求める旨を明示していなかった。これに対し、上告人は時効期間の計算において初日を算入すべきであること、及び反訴提起による中断の範囲を争い、消滅時効が成立している旨を主張して上告した。
事件番号: 平成21(受)1539 / 裁判年月日: 平成22年7月9日 / 結論: 破棄差戻
本訴の提起が不法行為に当たることを理由とする反訴について,本訴に係る請求原因事実と相反することとなる本訴原告自らが行った事実を積極的に認定しながら,本訴原告において記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをしていたことなどの事情について認定説示することなく,本訴の提起が不法行為に当たることを否定した原審の判断には,違法があ…
あてはめ
1. 民法138条は期間の計算につき、法令等に別段の定めがない限り、同法第6章(138条から143条)を適用すると定めている。不法行為の時効期間についても別段の定めはないため、140条が適用され、午前零時に始まるときを除き初日は算入されない。 2. 本件反訴請求は、その内容を検討しても一部請求である旨が明示されていない。したがって、債権の一部に限定する意思が客観的に示されていない以上、当該損害賠償請求権の全部を対象とするものと評価される。これにより、請求権の全部について時効中断の効力が及ぶと解するのが相当である。
結論
1. 損害及び加害者を知った時が午前零時でない限り、時効期間の初日は算入しない。2. 一部請求の明示がない反訴提起は、請求権の全部について消滅時効を中断させる。
実務上の射程
消滅時効の成否が日単位で争われる実務上、初日不算入の原則を再確認した点に意義がある。また、一部請求の明示がない場合の時効中断の範囲が全額に及ぶという原則は、不法行為以外の債権でも共通する基準として答案作成上重要である。
事件番号: 平成16(受)519 / 裁判年月日: 平成18年4月14日 / 結論: 破棄自判
本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許される。
事件番号: 平成7(オ)160 / 裁判年月日: 平成11年4月22日 / 結論: その他
甲と乙とが乗車中の自動二輪車の交通事故により死亡した甲の相続人が,捜査機関が甲を運転者と認定したことを知りながら,乙を運転者と主張して乙に対して損害賠償請求訴訟を提起した場合であっても,右主張に沿う事故直前の目撃者らの供述があり,現場の状況,自動二輪車の損傷状況などの客観的証拠からは運転者を特定することが必ずしも容易で…
事件番号: 平成2(オ)1456 / 裁判年月日: 平成6年4月21日 / 結論: 棄却
当事者が損害賠償の額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これをしんしゃくすべきである。
事件番号: 昭和53(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和54年9月7日 / 結論: 棄却
双方の過失に起因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。 (反対意見がある。)