レデイミクストコンクリート製造工場の隣接地住民が右工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして操業の差止め及び慰謝料の支払を請求したのに対し、住宅の建替えによって被害の程度が変化していること、付近は相当の交通騒音が存在する地域であることなど判示の事情を総合的に考察することなく、右工場の操業が法令等に違反していることを主な理由として、右請求を認容した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして隣接地住民がした操業の差止め及び慰謝料の請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
民法198条,民法199条,民法709条
判旨
工場等の操業に伴う騒音・粉じんが違法な利益侵害となるかは、公法上の規制違反の有無のみならず、諸般の事情を総合考慮した「受忍限度」の成否によって決すべきである。操業態様の悪質性は一つの考慮要素に過ぎず、被害の程度や地域環境等の具体的状況を無視して違法性を認めることはできない。
問題の所在(論点)
工場等の操業が法令等に違反し、その態様が著しく悪質である場合に、騒音・粉じん等の被害が「受忍限度」内であっても、直ちに人格権侵害等の違法性が認められるか。
規範
生活妨害(騒音・粉じん等)による侵害が違法となるかは、①侵害行為の態様、②侵害の程度、③被侵害利益の性質と内容、④所在地の地域環境、⑤行為の開始・継続の経過、⑥被害防止措置の有無及び内容・効果等の諸般の事情を総合的に考察し、被害が一般社会生活上「受忍すべき程度」を超えるか否かによって判断する。法令違反の事実は、右判断の一要素に留まり、直ちに違法性を基礎付けるものではない。
重要事実
砂利等の販売業者である上告人は、商業地域において建築基準法等に違反するコンクリート製造施設を虚偽の申請で建築し、行政による再三の停止・除却命令を無視して約8年間操業を継続した。隣接する被上告人は、この操業に伴う騒音・粉じんによる健康・生活利益の侵害を理由に、人格権に基づく差止めと損害賠償を請求した。原審は、上告人の操業態様が極めて悪質であることを主たる理由に、受忍限度論を適用せず(または緩和し)、請求を認容した。
あてはめ
本件では、被上告人の住居が10階へ移転し、南側に開口部がない構造に変わったことで、粉じんの流入消失や騒音被害の質の変化が生じている。また、当該地域には相当の交通騒音(環境騒音)が存在し、本件騒音はそのレベルと大差ないこと、上告人が相応の効果を有する防音・集じん対策を講じていることも確定している。原審は、これら被害の具体的程度や地域環境等の事情を十分に審理・考慮せず、専ら操業の公法違反・悪質性のみを重視して違法性を認めており、受忍限度の判断枠組みを誤っている。
結論
侵害行為が法令に違反し態様が悪質であっても、被害が受忍限度を超えない限り、直ちに私法上の違法性は認められない。本件差止め及び賠償請求を認めた原判決は、審理不尽・理由不備により破棄を免れない。
実務上の射程
人格権に基づく差止請求や不法行為に基づく賠償請求の場面で、被告側の「態様の悪質性(公法違反)」と「被害の具体的程度」の相関関係を示す射程を持つ。答案上は、受忍限度の総合考慮において、公法違反の事実はあくまで一要素として位置づけ、被害の程度や地域性といった他の要素とバランス良く論述する必要がある。
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