1 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,不適法である。 2 宝塚市が,宝塚市パチンコ店等,ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条例(昭和58年宝塚市条例第19号)8条に基づき同市長が発した建築工事の中止命令の名あて人に対し,同工事を続行してはならない旨の裁判を求める訴えは,不適法である。
1 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟の適否 2 地方公共団体が建築工事の中止命令の名あて人に対して同工事を続行してはならない旨の裁判を求める訴えが不適法とされた事例
裁判所法3条,行政代執行法1条,宝塚市パチンコ店等,ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条例(昭和58年宝塚市条例第19号)8条
判旨
国や地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に義務の履行を求める訴訟は、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではなく、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たらない。したがって、法律に特別の規定がない限り、このような訴訟を提起することは認められず不適法である。
問題の所在(論点)
国または地方公共団体が、専ら行政権の主体として国民に対し行政上の義務の履行を求める訴訟(いわゆる宝塚市パチンコ条例事件)は、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に該当し、適法といえるか。
規範
裁判所が審判できる対象は、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ法令の適用により終局的に解決できるものに限られる。国・地方公共団体が財産権の主体として権利利益の保護を求める場合はこれに当たるが、専ら行政権の主体として法規の適用の適正や一般公益の保護を目的として義務履行を求める訴訟は、法律に特別の規定がある場合に限り許容される。
重要事実
上告人(宝塚市長)は、市の条例に基づきパチンコ店建築工事の中止命令を発したが、被上告人がこれに従わず工事を続行した。上告人は、行政上の義務履行を確保するため、被上告人に対し工事の続行禁止を求める訴訟を提起した。本件条例には、裁判所に対してこのような訴えを提起できる旨の特別の規定は存在しなかった。
あてはめ
本件訴えは、地方公共団体が条例に基づく行政上の義務の履行を求めて提起したものである。原審の認定によれば、当該義務は上告人の財産的権利に由来するものではない。また、行政代執行法その他の法律において、一般に国や地方公共団体が国民に対し行政上の義務履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定も存在しない。したがって、本件は公益保護を目的とする行政権の行使であって、自己の権利利益の救済を目的とするものとは認められない。
結論
本件訴えは「法律上の争訟」に当たらず、不適法である。行政上の義務履行確保については、原則として行政代執行法等の定める行政上の強制手段によるべきであり、司法審査の対象とはならない。
実務上の射程
行政主体が原告となる訴訟の適格性を判断する重要判例。答案では、①財産権の主体としての訴え(私法的利益)か、②行政権の主体としての訴え(公法的利益)かを区別し、後者の場合は法律の特別の規定(機関訴訟や民衆訴訟としての性質)がない限り却下されるという論理で使用する。
事件番号: 平成1(オ)1682 / 裁判年月日: 平成6年3月24日 / 結論: 破棄差戻
レデイミクストコンクリート製造工場の隣接地住民が右工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして操業の差止め及び慰謝料の支払を請求したのに対し、住宅の建替えによって被害の程度が変化していること、付近は相当の交通騒音が存在する地域であることなど判示の事情を総合的に考察することなく、右工場の操業が法令等に違反してい…
事件番号: 昭和48(ク)15 / 裁判年月日: 昭和48年2月15日 / 結論: 却下
鑑定申立却下の決定は、民訴法四一九条ノ二第一項にいう「不服ヲ申立ツルコトヲ得サル決定及命令」に当たらないものと解するのが相当である。