死亡した男児の将来の得べかりし利益を算定するに当たり、賃金センサスによる男子労働者の産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金額を基準として収入額を算定した上、ホフマン式計算法により事故当時の現在価額に換算しても、直ちに不合理な算定方法とはいえない。
男児の逸失利益を男子労働者の全年齢平均賃金額を基準として算定しホフマン式計算法により事故当時の現在価額に換算することの当否
民法709条
判旨
死亡した年少男児の逸失利益の算定において、全年齢平均賃金を基準とし、ホフマン式計算法を用いて中間利息を控除する算定手法は不合理ではない。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく損害賠償(民法709条、710条)において、就労前の年少者の逸失利益を算定する場合、全年齢平均賃金を基準としてホフマン式計算法を用いる手法が認められるか。
規範
死亡した幼児の将来の得べかりし利益(逸失利益)の喪失による損害賠償額は、個々の事案に応じて適正に算定すべきものである。その際、賃金センサスによる全年齢平均賃金額を基礎収入の基準として算定し、ホフマン式計算法により中間利息を控除して現在価額に換算する手法は、特段の事情がない限り合理的な算定方法として許容される。
重要事実
本件事故当時9歳の男児であるDが死亡した。原審は、Dの将来の逸失利益を算出するにあたり、賃金センサスによる男子労働者の産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金額を基礎収入として採用した。その上で、ホフマン式計算法を用いて事故当時の現在価額に換算し、損害賠償額を算定した。これに対し、上告人は当該算定方法の適法性を争い、最高裁に上告した。
あてはめ
本件では、事故当時9歳という若年で死亡した男児の将来の収入を予測する必要がある。個別の具体的な将来の職業を特定することは困難であるため、統計的客観性を有する賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎とすることは、個別の事案に応じた適正な算定に資するといえる。また、中間利息の控除についても、ホフマン式計算法を用いることは実務上定着した合理的な計算手法であり、これにより算出された額が著しく不当なものとは認められない。したがって、本件の算定手法は不合理なものとはいえない。
結論
死亡した幼児の逸失利益につき、全年齢平均賃金を基準にホフマン式計算法を用いて算定した原審の判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
年少者の逸失利益算定における実務上のスタンダード(全年齢平均賃金+中間利息控除)を認めた射程の広い判例である。答案上は、基礎収入の算定において具体的な就労可能性が不明な場合の規範として引用し、原則として平均賃金を用いる合理性を説明する際に活用する。
事件番号: 昭和56(オ)498 / 裁判年月日: 昭和56年10月8日 / 結論: 棄却
一 交通事故により死亡した女児の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり、賃金センサスによるパートタイム労働者を除く女子全労働者・産業計・学歴計の表による各年齢階級の平均給与額を基準として収入額を算定しても不合理なものとはいえない。 二 交通事故により死亡した女児の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算…