甲社の唯一の株主であるX社が,甲社にその発行済株式総数の15倍の新株を著しく有利な価額で関連会社乙社に割り当てる発行をさせ,X社の甲社に対する持株割合を16分の1に減少させ,乙社の甲社に対する持株割合を16分の15とすることにより,X社の保有する甲社株式に表章された資産価値の相当部分(甲社の増資前の資産価値と増資後の資産価値の16分の1との差額)を乙社に移転させた場合において,X社が上記新株発行により上記資産価値を対価を得ることなく乙社に移転させることを意図したこと,X社の筆頭株主である財団法人丙が乙社の唯一の株主であり,X社,甲社,乙社及び財団法人丙の各役員が意思を相通じて上記新株発行を行ったこと,乙社が上記意図を十分に了解した上で上記資産価値の移転を受けたことなど判示の事実関係の下では,上記資産価値の移転は,X社の益金の額の計算において法人税法22条2項にいう取引に当たる。
親会社が子会社に新株の有利発行をさせて親会社の保有する子会社株式に表章された資産価値を上記発行を受けた関連会社に移転させたことが親会社の益金の額の計算において法人税法22条2項にいう取引に当たるとされた事例
法人税法22条2項
判旨
親会社が子会社に著しく有利な価額で新株を発行させ、株式の価値を実質的に第三者へ移転させた場合、その価値移転は法人税法22条2項の「取引」に該当し、益金の額に算入される。また、非上場株式の評価において、当時の課税実務上定着していた法人税額等相当額の控除を否定して時価純資産価額を算出することは、特段の弊害がない限り許されない。
問題の所在(論点)
1. 100%親会社の主導による子会社の第三者割当増資に伴う価値の移転が、法人税法22条2項の「無償による資産の譲渡又はその他の取引」に該当するか。2. 非上場株式の純資産価額を算定する際、評価差額に対する法人税額等相当額(45%〜51%相当)を控除すべきか。
規範
1. 法人税法22条2項にいう「取引」とは、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的・経済的な結果を指し、支配株主が意図的に資産価値を対価なく移転させた場合はこれに当たる。2. 非上場株式の価額は、原則として財産評価基本通達の例によるが、法人税課税上の弊害がある場合は修正を要する。ただし、企業の継続を前提とする場合であっても、当時の通達に基づき法人税額等相当額を控除して算定された純資産価額は、特段の事情がない限り通常の取引における当事者の合理的意思に合致し、適正な時価と認められる。
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…
重要事実
上告人(親会社)は、100%子会社であるD社に対し、上告人の関連会社であるEファンドを割当先として、発行済株式総数の15倍に及ぶ新株を著しく有利な価額で発行させた。これにより、上告人のD社に対する持株比率は100%から6.25%に激減し、D社の保有資産(テレビ局株式等)に表彰される資産価値の大部分がEファンドに移転した。課税当局は、この移転額を上告人からEファンドへの寄附金とみなして更正処分を行った。原審は、D社が保有する非上場株式の評価に際し、企業の継続を前提とする以上、評価差額に対する法人税額等相当額を控除すべきではないとして高額な資産価値を認定した。
あてはめ
1. 上告人はD社の唯一の株主として新株発行の条件を自由に決定できる立場にあり、Eファンドと意思を通じ、資産価値を対価なく移転させることを意図して実行した。この移転は上告人の支配が及ばない外的要因によるものではなく、合意に基づく結果であるから「取引」に該当する。2. 平成7年当時の実務では、財産評価基本通達に基づき、継続企業であっても評価の均衡の観点から法人税額等相当額を控除することが定着していた。納税者がこの控除を前提とすることは合理的であり、これと著しく異なる評価法を導入することは、混乱を招き課税上の弊害がある場合に限られる。本件では、控除を否定すべき特段の事情は認められない。
結論
価値の移転自体は益金算入の対象となる「取引」に該当するが、株式評価において法人税額等相当額を控除しなかった原審の判断には法令違反がある。再算定のため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
同族間での有利発行を用いた資産移転が寄附金課税の対象となることを明示した重要判例である。答案上では、評価手法として「財産評価基本通達」の合理性を原則としつつ、当時の通達や実務慣行から乖離した独自の時価算定が納税者の予見可能性を害することを論じる際に有用である。
事件番号: 平成12(行ヒ)133 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: その他
映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が,借入金及び組合員の出資金を原資として当該映画を購入する旨の契約を締結すると同時に,当該映画の配給権を配給会社に付与する旨の配給契約を締結した場合において,当該配給契約により当該映画に関する権利のほとんどが配給会社に移転され,当該組合は実質的には当該映画についての使用収益権…
事件番号: 令和2(行ヒ)303 / 裁判年月日: 令和4年4月21日 / 結論: 棄却
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。 2 …
事件番号: 平成14(行ヒ)112 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 破棄差戻
昭和62年に個人が非上場株式を低額で譲り受けたことによる給与所得に係る収入金額とすべき金額,同年に個人が法人に対し非上場株式を低額で譲渡したことによる譲渡所得に係る総収入金額に算入すべき金額及び同年に個人が有利な発行価額による非上場の新株を取得する権利を与えられたことによる一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額の各計…