犯罪の被害者は,証拠物を司法警察職員に対して任意提出した上,その所有権を放棄する旨の意思表示をした場合,当該証拠物の廃棄処分が単に適正を欠くというだけでは国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることができない。 (反対意見がある。)
犯罪の被害者が証拠物を司法警察職員に対して任意提出した上その所有権を放棄する旨の意思表示をした場合において当該証拠物の廃棄処分が適正を欠くことを理由として国家賠償請求をすることの可否
国家賠償法1条1項,刑訴法221条
判旨
犯罪被害者が、任意提出した証拠物の所有権を放棄した場合、その廃棄処分が適正を欠くものであっても、被害者が捜査によって受ける利益は反射的利益にすぎないため、法律上保護される利益の侵害には当たらない。
問題の所在(論点)
犯罪被害者が所有権を放棄して任意提出した証拠物を、捜査機関が捜査継続中に不適切に廃棄した場合、国家賠償法1条1項にいう「法律上保護される利益」の侵害が認められるか。
規範
国家賠償法1条1項の「法律上保護される利益」の成否について、犯罪捜査は国家及び社会の秩序維持という公益を図るためのものであり、被害者の損害回復を直接の目的とするものではない。したがって、被害者が捜査によって受ける利益は、公益的見地から行われる捜査の結果として反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護される利益には当たらない。
重要事実
強盗強姦被害に遭った上告人は、遺留指紋採取等の捜査に協力し、自身の衣類や精液付着のちり紙等(本件証拠物)を任意提出した際、「所有権を放棄する」旨の書面に署名押印した。警察官は血液型鑑定終了後、事件の捜査が継続中であったにもかかわらず、証拠価値を軽視して本件証拠物を廃棄した。上告人は、証拠物の廃棄により精神的苦痛を被ったとして、人格権的利益の侵害を理由に国家賠償を請求した。
あてはめ
本件における証拠物の廃棄は、鑑定終了直後かつ捜査継続中に行われており、適正を欠く措置といえる。しかし、上告人は提出時に所有権放棄の意思表示をしており、本件では所有権侵害は争点となっていない。また、上告人が主張する「適正な捜査が行われることによる利益」は、捜査の公益的性質に由来する反射的な事実上の利益にとどまる。したがって、担当官が保管上の約束をしていない以上、廃棄処分によって上告人の法的利益が侵害されたとは認められない。
結論
本件証拠物の廃棄処分は適正を欠くものの、上告人の法律上保護される利益を侵害したものとはいえず、国家賠償法上の損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
捜査機関の不作為や不適切な捜査に対する被害者からの国賠請求において、広く射程を有する。被害者の利益を「反射的利益」として限定的に捉える判例法理を確認するものであり、所有権等の具体的権利を放棄している場合には、人格権的利益を根拠とする救済が極めて困難であることを示している。
事件番号: 平成17(受)530 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: 棄却
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