公立図書館の職員である公務員が,閲覧に供されている図書の廃棄について,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをすることは,当該図書の著作者の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる。
公立図書館の職員が図書の廃棄について不公正な取扱いをすることと当該図書の著作者の人格的利益の侵害による国家賠償法上の違法
国家賠償法1条1項,図書館法2条,図書館法3条,憲法13条,憲法19条,憲法21条1項
判旨
公立図書館の職員が、著作者の思想信条に基づく独断的な評価や個人的な好みにより不公正に図書を廃棄した場合は、著作者が著作物を通じて思想等を公衆に伝達する利益(人格的利益)を侵害し、国家賠償法上違法となる。
問題の所在(論点)
公立図書館において閲覧に供されている図書を職員が不公正に廃棄した場合に、著作者に対する国家賠償法上の違法性が認められるか。著作者に、図書館に蔵書が維持されることについて保護されるべき法的利益が認められるかが問題となる。
規範
公立図書館の職員は、独断的な評価や個人的な好みにとらわれず公正に図書館資料を取り扱う職務上の義務を負う。著作者が著作物によってその思想・意見等を公衆に伝達する利益は、憲法上の表現の自由等に鑑み、法的保護に値する人格的利益である。したがって、図書館職員が職務上の義務に反し、著作者・著作物に対する独断的評価や個人的好みによって不公正な廃棄を行ったときは、当該人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる。
重要事実
船橋市立図書館の司書職員が、特定の団体(上告人ら)やその著書に対する否定的評価と反感から、独断で、市の除籍基準に該当しないにもかかわらず、上告人らの執筆・編集に係る書籍等107冊を蔵書リストから削除して廃棄した。上告人らは、著作者としての人格的利益を侵害されたとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料を求めた。
あてはめ
本件司書は、上告人ら及びその著書に対する「否定的評価と反感」という個人的な動機から本件廃棄を行っている。これは、図書館職員が負うべき「公正に資料を取り扱うべき職務上の義務」に明白に反する。また、この行為により、上告人らが著作物を通じて自らの思想・意見を公衆に伝達する場が奪われており、著作者が有する「思想を伝達する利益」を不当に損なうものである。したがって、本件廃棄は上告人らの人格的利益を違法に侵害したものと評価される。
結論
本件廃棄は、上告人らの人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法である。原審の請求棄却判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
本判決は、著作者に「図書館への蔵書請求権」や「特定の管理方法を求める権利」までは認めていない。しかし、公権力行使の主体である公立図書館において、思想信条等を理由とした差別的・不公正な廃棄がなされた場合に限り、著作者の人格的利益(表現の自由の派生)を根拠として損害賠償を認める構成をとっている。答案上は、公的施設における「情報の選別・排除」が著作者の主観的権利を侵害するか否かの文脈で活用できる。
事件番号: 平成17(受)530 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: 棄却
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