1 公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として,管理者の裁量にゆだねられており,学校教育上支障がない場合であっても,行政財産である学校施設の目的及び用途と当該使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。 2 学校教育法85条に定める学校教育上の支障がある場合とは,物理的支障がある場合に限られるものではなく,教育的配慮の観点から,児童,生徒に対し精神的悪影響を与え,学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ,現在の具体的な支障がある場合だけでなく,将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる。 3 公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かの管理者の判断の適否に関する司法審査は,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものである。 4 公立小中学校等の教職員によって組織された職員団体がその主催する教育研究集会の会場として市立中学校の学校施設を使用することの許可を申請したのに対し,市教育委員会が同中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き,児童生徒に教育上悪影響を与え,学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由でこれを不許可とする処分をした場合につき,(1)教育研究集会は,上記職員団体の労働運動としての側面も強く有するものの,教員らによる自主的研修としての側面をも有していること,(2)前年の第48次教育研究集会まで1回を除いてすべて学校施設が会場として使用されてきていたこと,(3)上記申請に係る集会について右翼団体等による具体的な妨害の動きがあったことは認められず,上記集会の予定された日は休校日である土曜日と日曜日であったこと,(4)教育研究集会の要綱などの刊行物に学習指導要領等に対して批判的な内容の記載は存在するが,いずれも抽象的な表現にとどまり,それらが自主的研修の側面を大きくしのぐほどに中心的な討議対象となるものとまでは認められないこと,(5)当該集会の中でも学校教科項目の研究討議を行う分科会の場として学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで利便性に大きな差違があることは否定できないこと,(6)当該中学校の校長が職員会議を開いた上で支障がないとし,いったんは口頭で使用を許可する意思を表示した後に,市教育委員会が過去の右翼団体の妨害行動を例に挙げて使用させない方向に指導し,不許可処分をするに至ったことなど判示の事情の下においては,上記不許可処分は裁量権を逸脱したものである。
1 公立学校施設の目的外使用の許否の判断と管理者の裁量権 2 学校教育法85条に定める学校教育上の支障の意義 3 公立学校施設の目的外使用の許否の判断の適否に関する司法審査の方法 4 公立小中学校等の教職員の職員団体が教育研究集会の会場として市立中学校の学校施設を使用することを不許可とした市教育委員会の処分が裁量権を逸脱したものであるとされた事例
(1〜4につき) 学校教育法85条 (1,3,4につき) 地方自治法238条4項,地方自治法238条の4第4項,学校施設の確保に関する政令3条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条2号 (2,4につき) 国家賠償法1条1項,行政事件訴訟法30条 (4につき)呉市立学校施設使用規則(昭和40年呉市教育委員会規則第4号)2条,呉市立学校施設使用規則(昭和40年呉市教育委員会規則第4号)4条,呉市立学校施設使用規則(昭和40年呉市教育委員会規則第4号)5条
判旨
学校施設の目的外使用許可は管理者の広範な裁量に属するが、具体的な妨害の恐れがないにもかかわらず、過去の事例や対立関係を背景としてなされた不許可処分は、考慮すべき事項の評価が合理性を欠き、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。
問題の所在(論点)
学校施設の目的外使用許可に関する管理者の裁量の範囲、および、過去の紛争や団体間の対立を理由とする使用不許可処分が裁量権の逸脱・濫用(国家賠償法上の違法)に該当するか。
規範
学校施設は行政財産であり、その目的外使用の許可(地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条等)は原則として管理者の裁量に委ねられる。裁量権の行使は、使用の日時・場所・態様、必要性の程度、許可による弊害、代替施設の確保の困難性等を総合考慮してなされるべきである。その司法審査は、判断要素の選択や判断過程に合理性を欠き、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に、裁量権の逸脱・濫用として違法となると解される。
重要事実
職員団体である被上告人が、中学校施設での教育研究集会の開催を申請した。過去の集会で右翼団体の妨害があったことや、県教委との対立関係を背景に、市教委は「学校教育への支障(教育上の悪影響)」を理由に不許可処分とした。しかし、当時は具体的な妨害の兆候はなく、集会予定日は休校日で生徒への直接的影響も低かった。また、当該集会は教員の自主的研修としての側面を有し、実験器具等の備わった学校施設を利用する必要性も高かった。
あてはめ
まず、集会は自主的研修の側面があり、学校施設利用の必要性が高い。次に、不許可の理由とされた「支障」について、本件処分時に具体的な妨害の動きはなく、休校日の開催ゆえ生徒への影響も限定的である。さらに、刊行物の批判的内容も抽象的で、直ちに教育上の悪影響があるとはいえない。以上より、市教委は重視すべきでない要素(具体的な根拠を欠く妨害の懸念や対立関係)を重視する一方、考慮すべき要素(研修の側面や施設の必要性)を十分に考慮しておらず、評価が明らかに合理性を欠いている。
結論
本件不許可処分は、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとして、裁量権を逸脱・濫用した違法な処分である。
実務上の射程
行政財産の目的外使用許可に関するリーディングケース。裁量審査の枠組みとして「考慮不尽」や「他事考慮(評価の合理性欠如)」を論じる際の規範として確立されている。特に、集会の自由との関係で「明白な困難」を求めた泉佐野市民会館事件(公の施設)との比較において、行政財産(学校)ではより広範な裁量が認められつつも、本判決のように事実関係の評価を厳格に審査する手法は答案作成上極めて重要である。
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