建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において,3年ごとに賃料の改定を行うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租公課の増減額を加算又は控除した額とするが,消費者物価指数が下降してもそれに応じて賃料の減額をすることはない旨の特約が存する場合であっても,上記契約の当事者は,そのことにより借地借家法11条1項に基づく賃料減額請求権の行使を妨げられるものではない。
建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において賃料を減額しない旨の特約が存することにより賃料減額請求権の行使を妨げられることはないとされた事例
借地借家法11条1項,民法91条
判旨
借地借家法11条1項は強行法規であり、賃料を減額しない旨の特約(賃料自動改定特約)によってその適用を排除することはできない。ただし、当該特約の存在は、賃料増減額請求の当否および相当賃料額を判断する際の重要な事情として考慮される。
問題の所在(論点)
借地借家法11条1項に基づく賃料減額請求権の行使が、賃料を減額しない旨の賃料自動改定特約によって排除されるか。また、同特約は相当賃料額の算定においてどのように考慮されるべきか。
規範
借地借家法11条1項は強行法規であるから、賃料自動改定特約(特に減額しない旨の特約)によっても、同条に基づく賃料増減額請求権の行使を妨げることはできない。もっとも、特約は契約締結時の賃料決定の重要な要素であるため、請求の当否(要件充足性)および相当賃料額の判断において、特約の趣旨や合意の経緯等の諸般の事情を総合的に考慮すべきである。
重要事実
賃貸人Yと賃借人Xらは、3年ごとに消費者物価指数等に基づき賃料を改定するが、指数が下降しても賃料を減額しない旨の特約(本件特約)を付して土地賃貸借契約を締結した。その後、土地価格が急激に下落したため、Xらは借地借家法11条1項に基づき賃料減額請求を行った。原審は、特約の効力を認め、事情変更の原則が適用される特段の事情がない限り減額請求はできないとして、Xらの請求を棄却した。
事件番号: 平成14(受)689 / 裁判年月日: 平成15年6月12日 / 結論: その他
地代等自動改定特約において地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には,同特約の適用を争う当事者は,同特約に拘束されず,同項に基づく地代等増減請求権の行使を妨げられない。
あてはめ
本件各契約は建物所有目的の土地賃貸借であり、借地借家法11条1項が適用される。同条は強行法規であるため、本件特約の存在にかかわらずXらは減額請求権を行使し得る。原審が事情変更の原則に限定して判断したのは誤りである。具体的判断においては、土地価格の下落という客観的事実だけでなく、本件特約が付された経緯や当事者の意向を「重要な事情」として組み入れ、改めて相当賃料額を審理すべきである。
結論
賃料減額請求は可能である。本件特約を理由に請求を否定した原判決を破棄し、相当賃料額の再検討のため本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
賃料増減額請求権の強行法規性を確認した重要判例である。答案上は、特約があっても「11条1項の行使自体は妨げられない」と明示した上で、あてはめにおいて「特約の存在を諸般の事情(11条1項柱書)の一つとして考慮する」という二段階の論法を用いる。
事件番号: 平成15(受)869 / 裁判年月日: 平成16年11月8日 / 結論: 破棄差戻
1 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間で,あらかじめ賃料額及びその改定等について協定を締結し,これに基づき,乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容として締結した契約(いわゆるサブリース契約)についても,借地借家法32条1項の規定が適用される。 2 …
事件番号: 平成18(受)192 / 裁判年月日: 平成20年2月29日 / 結論: 破棄差戻
賃料自動改定特約のある建物賃貸借契約の賃借人から借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求がされた場合において,当該請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たり,上記特約による改定前に賃貸借契約の当事者が現実に合意した直近の賃料を基にして,その合意された日から当該請求の日までの間の経済事情の変動等を考慮しなければなら…