債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡は,破産法72条2号に基づく否認権行使の対象となる。
債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡と破産法72条2号による否認
破産法72条2号,民法127条1項,民法466条
判旨
支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約に基づく債権の移転は、実質的に支払停止等という危機時期が到来した後の債権譲渡と同視できるため、旧破産法72条2号(現行162条1項1号)の否認権行使の対象となる。
問題の所在(論点)
支払停止等の危機時期より前に締結された「支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約」に基づき、危機時期の到来によって生じた債権譲渡の効力が、破産法上の否認権(旧法72条2号、現行162条1項1号相当)の対象となるか。
規範
債務者の支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約は、その締結自体は危機時期前であっても、危機時期の到来により直ちに責任財産を逸出させることを目的とするものである。したがって、かかる契約に基づく債権譲渡は、実質的にみて支払停止等の危機時期が到来した後の債権譲渡と同視すべきであり、否認権行使の対象となる。
重要事実
衣料品販売業の破産会社Dは、将来の債務担保のため、特定の第三債務者に対する売掛債権を上告人らに譲渡する契約を締結した。この契約には、支払停止や破産申立て等を停止条件とする効力発生条項が含まれていた。その後、Dが実際に支払停止の状態に陥ったため、上告人らは確定日付ある通知を行い、第三債務者から弁済を受けた。これに対し、破産管財人である被上告人が、当該債権譲渡について否認権を行使し、不当利得返還を求めた。
あてはめ
本件債権譲渡契約は、支払停止等の危機時期の到来を停止条件として債権を移転させるものである。これは危機時期まで債務者の責任財産に属していた債権を、危機時期の到来と同時に逸出させることをあらかじめ意図したものであり、否認制度の趣旨を潜脱しようとするものといわざるを得ない。したがって、契約締結が危機時期前であっても、その実質において危機時期後の担保供与等と同視できるため、否認権行使を認めるべきである。
結論
本件債権譲渡は否認権行使の対象となり、被上告人による不当利得返還請求を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
集合債権譲渡担保における「譲渡の効力発生時期」を危機時期に結びつける条項(いわゆる「フリッピング・クローズ」等)の否認可能性を判断する際のリーディングケースである。現行法162条1項1号(偏頗行為否認)の適用場面において、実質的な危機時期の判断基準として確立している。
事件番号: 昭和59(オ)467 / 裁判年月日: 昭和60年2月14日 / 結論: 破棄差戻
債務者が債務整理の方法等について弁護士と相談し、右弁護士との間で破産申立の方針を決めたとしても、他に特段の事情のない限り、破産法七四条一項にいう「支払ノ停止」があつたとはいえない。
事件番号: 昭和39(オ)166 / 裁判年月日: 昭和42年5月2日 / 結論: 棄却
破産者が支払停止以前にした本旨弁済でも、その弁済が他の債権者を害することを知つてされたものであるときは、破産法第七二条第一号により否認することができる。