社団たる医療法人の社員甲が提起した社員乙の入社承認,理事選任及び診療所の開設に係る定款変更の各社員総会決議不存在確認の訴えは,甲が,甲の議決権の割合を低下させる乙の入社を否定し,当該医療法人の常務を処理する権限を有する理事の選任を否定し,決議に基づき開設された診療所の運営の適法性を争っているなど判示の事情の下においては,確認の利益がないとはいえない。
社団たる医療法人の社員の入社承認,理事選任及び診療所の開設に係る定款変更の各社員総会決議不存在確認の訴えにつきいずれも確認の利益があるとされた事例
民訴法134条,医療法44条2項3号,医療法44条2項6号,医療法44条2項7号,医療法50条,医療法68条,民法63条
判旨
社団たる医療法人の社員総会決議不存在確認の訴えは、決議から派生した現在の法律上の紛争を解決し、社員の議決権割合の維持や法人運営の適正性確保といった法律上の地位・利益を保護するために必要かつ適切な場合に、確認の利益が認められる。
問題の所在(論点)
社団たる医療法人の社員総会決議(入社承認・理事選任・定款変更)の不存在確認の訴えにおいて、どのような場合に「確認の利益」が認められるか。
規範
法人の会議体による決議の存否に疑義があり、これを前提として派生した法律上の紛争が現に存在する場合、決議の存否を確定することが、当事者の法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ適切な手段であれば、確認の利益が認められる。具体的には、①社員の議決権割合に影響を及ぼす入社承認決議、②法人の基本運営を左右する理事選任決議、③経営の根幹に関わる診療所開設のための定款変更決議について、各決議の存否が社員の法律上の利益に直結するといえる。
重要事実
医療法人たる被上告人において、当初の社員の一人であった上告人が、社員の入社承認決議、理事選任決議、及び分院開設に伴う定款変更決議の不存在確認を求めた事案。被上告人は議事録や登記等により決議が存在する外形を作り出していたが、上告人はこれを否定。原審は、社員や理事の氏名等が登記事項ではないことや、具体的な紛争が立証されていないことを理由に確認の利益を否定した。
事件番号: 昭和44(オ)276 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄自判
取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によつて招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があつたものと解することはできない。
あてはめ
①入社承認決議については、上告人が否定する入社を認めれば上告人の議決権割合が低下し、社員としての地位が脅かされるため、紛争解決の必要性が高い。②理事選任決議については、理事会が法人の常務を処理し経営を担う点に鑑み、社員が適正な選任を求めることは法律上の利益にあたる。③定款変更決議による分院開設は経営の根幹に関わり、社員には法令・定款に従った適正な運営を求める利益がある。被上告人が現に決議を前提とした運営を継続し、上告人がその適法性を争っている以上、決議から派生した法律上の紛争が現に存在するといえる。
結論
本件各決議の不存在確認を求める訴えについて、確認の利益を肯定できる。原審は確認の利益を否定した点において法令違反があるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
会社法上の決議取消・無効・不存在の訴えの規定(830条等)が準用されない医療法人等の一般法人において、民事訴訟法上の確認の訴えにより決議を争う際の確認の利益の判断枠組みを示す。決議そのものが過去の事実であっても、そこから派生する現在の権利義務関係(議決権の数や役員の地位等)に争いがある場合には、訴えの適法性が認められやすいことを示唆する。
事件番号: 昭和63(オ)1241 / 裁判年月日: 平成5年3月2日 / 結論: 破棄自判
事業協同組合の定款に「専務理事は理事長が欠員のときはその職務を行う」旨の定めがあるが、同組合の定款によれば、理事長及び専務理事を含む役員の全員につき同時に任期が満了する旨及び任期満了によつて退任した役員は後任の役員が就任するまで役員の職務を行う旨の定めがあるなど判示の事実関係の下においては、右の定款にいう欠員には、理事…
事件番号: 平成1(オ)573 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には、特段の事情がない限り、株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しない。 二 株式を準共有する共同相続人間において商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」…
事件番号: 平成11(受)743 / 裁判年月日: 平成14年4月25日 / 結論: 棄却
阪神・淡路大震災により被災した兵庫県司法書士会に3000万円の復興支援拠出金を寄付することは群馬司法書士会の権利能力の範囲内の行為であり,そのために登記申請事件1件当たり50円の復興支援特別負担金を徴収する旨の同会の総会決議の効力は,同会の会員に対して及ぶ。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成10(オ)1183 / 裁判年月日: 平成11年3月25日 / 結論: 棄却
取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に、同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合には、後の決議がいわゆる全員出席総会において行われたなどの特段の事情のない限り、先の決議についても存否の確認の利益が認められる。