阪神・淡路大震災により被災した兵庫県司法書士会に3000万円の復興支援拠出金を寄付することは群馬司法書士会の権利能力の範囲内の行為であり,そのために登記申請事件1件当たり50円の復興支援特別負担金を徴収する旨の同会の総会決議の効力は,同会の会員に対して及ぶ。 (反対意見がある。)
被災した他の司法書士会に金員を寄付するために特別に負担金を徴収する旨の司法書士会の総会決議の効力が同会の会員に対して及ぶとされた事例
司法書士法14条,民法43条
判旨
司法書士会による被災地への復興支援拠出金の寄付は、司法書士の業務改善や公的機能の回復に資するものであり、会の目的の範囲内である。また、強制加入団体であっても、会員の思想信条を害さず、負担が社会通念上過大でなければ、公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、多数決により会員に拠出を強制できる。
問題の所在(論点)
強制加入団体である司法書士会が行う被災地への寄付が目的の範囲内(権利能力の範囲内)といえるか。また、会員にその費用負担を強制することが多数決原理の限界を超えないか。
規範
1. 目的の範囲(権利能力):司法書士会は、法所定の目的(司法書士法14条2項)を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲として、他会への提携・協力・援助等の活動もその範囲に含まれる。 2. 会員の協力義務の限界:強制加入団体における多数決による決定であっても、①会員の政治的・宗教的立場や思想信条の自由を害さず、②会員に課される負担が社会通念上過大でないなど、公序良俗に反し協力義務を否定すべき「特段の事情」がない限り、会員に対して効力を有する。
重要事実
強制加入団体である司法書士会(被上告人)が、阪神・淡路大震災で被災した他会への3000万円の復興支援拠出金を寄付するため、会員から登記1件につき50円の特別負担金を徴収する旨の総会決議を行った。会員である上告人らが、寄付は目的外であり、強制加入団体が会員に負担を強制することはできないとして、決議の無効と支払義務の不存在を訴えた。
あてはめ
1. 目的の範囲内か:本件拠出金は、被災者の相談活動等を行う他会の公的機能の回復を目的とする。3000万円という額は多額だが、震災の甚大さと支援の緊急性に鑑みれば、目的を逸脱するものとはいえない。 2. 協力義務の限界:本件負担金の徴収は、特定の政治・宗教等の思想を強いるものではない。また、額も登記報酬の約0.2%強(50円)に過ぎず、期間も3年間に限られている。したがって、社会通念上過大な負担とはいえず、協力義務を否定すべき特段の事情は認められない。
結論
本件拠出金の寄付は被上告人の権利能力の範囲内にあり、本件決議は公序良俗に反する等の特段の事情がないため有効である。よって、会員は負担金の支払義務を免れない。
実務上の射程
南九州税理士会事件判決が「特定の政治的思想」への寄付を無効としたのに対し、本件は震災復興という「公的機能の回復」が目的であれば、強制加入団体による多数決の決定が広く認められることを示した。答案上は、団体の目的との関連性と、負担の性質(思想的中立性)および程度(過大か否か)を分けて論じる際に参照すべき射程の広い判例である。
事件番号: 平成14(受)297 / 裁判年月日: 平成15年3月25日 / 結論: その他
郵便局に所属する保険外務員が,簡易保険の契約者に対し,他の顧客に届けるべき満期保険金を盗まれ,これをその日のうちに届けなければ勤務先に発覚して免職になるなどの虚偽の事実を述べ,同契約者が簡易保険の契約者貸付けの方法により借り受けた資金の融通を受けることによって同契約者に加えた損害は,民法715条1項にいう「被用者カ其事…
事件番号: 平成14(受)1244 / 裁判年月日: 平成16年12月24日 / 結論: 破棄差戻
社団たる医療法人の社員甲が提起した社員乙の入社承認,理事選任及び診療所の開設に係る定款変更の各社員総会決議不存在確認の訴えは,甲が,甲の議決権の割合を低下させる乙の入社を否定し,当該医療法人の常務を処理する権限を有する理事の選任を否定し,決議に基づき開設された診療所の運営の適法性を争っているなど判示の事情の下においては…