一、保険業法第一〇条第三項にいう「保険契約者、被保険者又は保険金額を受取るべき者の利益」とは、たとえ個々的に観念すれば一見不利益のごとくであつても、保険事業の破たんを救う道が他に存しないため同條項の処分をすることが結局契約者らの利益に帰する場合をも含む趣旨と解すべきである。 二、保険業法第一〇条第三項の処分は、これを保険会社に告知することによって効力を生じ、各個の契約者に対する告知を要しない。 三、旧憲法下において制定施行された法律が旧憲法に違反するか否かを実質的に審査する権限は、憲法第八一条によつても、裁判所に認められていないと解すべきである。
一、保険業法第一〇条第三項にいう「保険契約者、被保険者又は保険金額を受取るべき者の利益」の意義 二、保険業法第一〇条第三項の主務大臣の処分と保険契約者に対する告知の要否 三、新憲法施行後裁判所は法律が旧憲法に反するか否かの実質的審査権を有するか
憲法81条
判旨
保険業法10条3項に基づく主務大臣による既存契約の保険料増額処分は、保険契約の危険団体的性質に照らし、契約者全体の利益を保護するために特に必要な限度で行われる限り、日本国憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 保険業法10条3項に基づく既存契約の保険料増額処分において、契約者個別の告知は必要か。2. 同条項に基づく一律の保険料増額処分は、契約者の財産権を侵害し、憲法29条(または旧憲法27条)に違反するか。
規範
保険契約は、多数の構成員が共同して損失を充足する「危険団体的性質」を有する。この特質に鑑みれば、法10条3項の「利益」とは、契約者等の立場を全体的に考察して判断すべきである。また、主務大臣の処分は形成的な効力を有し、保険会社に告知された時点で効力が発生する。同条項が定める主務大臣の権限は、契約者等の保護のために特に必要な場合に限定され、保険数理上の合理的な限界という客観的限度を含むものであるため、憲法29条が禁じる無制限な財産権の侵害にはあたらない。
事件番号: 昭和32(オ)1186 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和29年法律第100号による利息制限法の施行前になされた損害金の特約は、特段の事情がない限り、裁判所が当然に減額すべきものではない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で、利息を月6分、損害金を月6分以上(日歩20銭ないし30銭)とする金銭消費貸借上の約定がなされた。本件契約は、昭和29年…
重要事実
主務大臣は、保険事業の維持経営が破綻の危機に瀕していたため、保険業法10条3項に基づき、既存の生命保険契約を含む保険料の増額処分を行った。この処分は、増額以外に破綻を救う道がないと判断された際になされたものである。上告人(契約者)は、この処分が個々の契約者に告知されていないことや、契約内容を一方的に変更し財産権を侵害するものであるとして、処分の無効を主張した。
あてはめ
まず、保険契約の性質上、保険事業が破綻すれば契約者は保険金受領すら不可能となり、増額による不利益を上回る損失を蒙る。本件処分は、保険数理上の合理的な限界の下で、事業維持のために不可欠な手段としてなされており、契約者全体の利益確保と負担の公平に資する。次に、本処分は形成的処分であり、法律の委任に基づき保険会社への告知によって効力を生ずるため、個々の契約者への告知や公告は効力発生の要件ではない。さらに、同条項は主務大臣の裁量を無限定に認めたものではなく、客観的に定まりうる限度があるため、財産権の不当な侵害とはいえない。
結論
主務大臣の処分は適法であり、保険料増額の効果は既存の契約者に対しても有効に生じる。したがって、本件処分を無効とする上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
行政庁の形成的処分における告知の相手方や効力発生時期の判断、および「公共の福祉」を根拠とする契約内容の強制的変更が財産権侵害に当たらないとする論理として、行政法および憲法の論点で参照可能である。特に、集団的利益の保護が個別の不利益を正当化する「危険団体的性質」の理論は、保険法上の重要規範となる。
事件番号: 昭和38(オ)237 / 裁判年月日: 昭和40年3月19日 / 結論: 棄却
公正証書には担保物件として土地および建物を供した旨の記載があるのに、その作成を嘱託した委任状には単に建物を供した旨の記載があるにすぎない場合にも、真実該公正証書記載どおりに作成すべき権限を有していたのに土地の記載を脱落したものであることが明らかなときは、右瑕疵は該公正証書の無効をきたす重大なものとは解されない。
事件番号: 昭和38(オ)1093 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
登記申請書には抵当権設定と表示されていて「根抵当権」なる文言が用いられていなくても、同申請書に当該抵当権の被担保債権額として元本極度額金何円なる記載がある場合、右申請書によつてなされた根抵当権設定登記は有効である。
事件番号: 平成10(オ)364 / 裁判年月日: 平成12年4月11日 / 結論: 棄却
特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り、権利の濫用に当たり許されない。