1 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づく高等学校用の教科用図書の検定は,憲法26条,13条に違反しない。 2 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づく高等学校用の教科用図書の検定は,憲法21条に違反しない。 3 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づく高等学校用の教科用図書の検定は,憲法23条に違反しない。 4 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づいて文部大臣が行う高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定や,必要な修正を行った後に再度審査を行うことが適当であると文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会が認める場合に申請者に通知する検定意見の内容等の審査,判断は,文部大臣の合理的な裁量にゆだねられているが,上記審議会の判断の過程に,申請原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況等についての認識や検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があり,文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,上記判断は,裁量権の範囲を逸脱したものとして,国家賠償法上違法となる。
1 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づく高等学校用の教科用図書の検定と憲法26条,13条 2 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づく高等学校用の教科用図書の検定と憲法21条 3 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づく高等学校用の教科用図書の検定と憲法23条 4 学校教育法21条1項(平成11年法律第160号による改正前のもの),51条(平成13年法律第105号による改正前のもの),教科用図書検定規則(平成6年文部省令第3号による改正前のもの),旧高等学校教科用図書検定基準(平成5年文部省告示第134号による改正前のもの)に基づく高等学校用の教科用図書の検定における文部大臣の裁量的判断と国家賠償法上の違法
(1〜4につき)学校教育法(平成11年法律第160号による改正前のもの)21条1項,学校教育法(平成13年法律第105号による改正前のもの)51条,教科用図書検定規則(平成10年文部省令第38号による改正前のもの)1条,教科用図書検定規則(平成10年文部省令第38号による改正前のもの)2条,教科用図書検定規則(平成11年文部省令第2号による改正前のもの)7条,教科用図書検定規則(平成12年文部省令第53号による改正前のもの)3条,教科用図書検定規則(平成12年文部省令第53号による改正前のもの)4条 (1につき)憲法13条,憲法26条 (2につき)憲法21条 (3につき)憲法23条 (4につき)国家賠償法1条1項
判旨
教科書検定制度は、教育の政治的中立性や全国的な教育水準の確保という高度の公益目的があり、文部科学大臣の広範な裁量を認めるが、その判断過程に看過し難い過誤がある場合には裁量権を逸脱し違法となる。また、同制度は思想の表現そのものを禁止するものではなく、検定手続において不服申立等の機会が確保されていることから、憲法21条、23条、26条、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 教科書検定制度は、憲法21条、23条、26条、31条に違反し違憲か。 2. 検定意見の付与等、文部大臣が行う検定上の判断が国家賠償法上違法となる判断枠組み(裁量権の限界)。
規範
1. 憲法適合性:普通教育における教育内容の決定権能は、国に必要かつ相当な範囲で認められる。検定制度は、記述の正確性や中立性の確保を目的としており、表現の自由(21条)や学問の自由(23条)を本質的に侵害せず、適正手続(31条)の法意にも反しない。 2. 裁量権の逸脱:検定における合否判定や検定意見の通知は、専門技術的判断に基づく文部大臣の裁量に委ねられる。ただし、判断の過程において、記述内容や根拠となる学説状況・教育状況の認識、または基準違反の評価に「看過し難い過誤」があり、判断がこれに依拠した場合には、裁量権を逸脱・濫用したものとして国家賠償法上違法となる。
重要事実
教科書会社Dが申請した高校現代社会の教科書(本件申請図書)の原稿に対し、文部大臣は検定審議会の審議を経て、上告人の執筆部分を含む70箇所に検定意見を付し、合否を留保した。具体的には「マスコミ」や「アジアの中の日本」のテーマにつき「選択・扱い」が不適切等の指摘がなされた。上告人は修正が困難であるとして執筆を断念し、別人の執筆により修正が行われ合格となった。上告人は、検定制度自体の違憲性や、検定意見が裁量を逸脱した違法なものであると主張して国賠請求を提起した。
あてはめ
1. 憲法適合性:検定制度は不合格図書も一般図書として出版可能であり「表現の自由」を禁じるものではない。また、検定意見への弁明や意見申立ての手続(検定規則)が整備されており、適正手続に反しない。 2. 裁量の逸脱:本件の「テーマ(6)」「テーマ(8)」に関する検定意見は、学問的正確性や教育的相当性の観点から審議会で検討されたものである。原審の認定によれば、指摘の根拠となった当時の学説状況や教育状況の認識に、裁量権の逸脱を基礎付ける「看過し難い過誤」は認められない。調査官の補足説明等の運用も、公正を欠くものとはいえない。
結論
本件検定制度は合憲である。また、本件の検定意見に裁量権の逸脱・濫用は認められず、国家賠償法上の違法性はないため、請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
行政法の裁量論における「専門技術的裁量」の重要判例であり、特に「判断過程の合理性」を審査する際の基準として「看過し難い過誤」というキーワードを引用すべきである。憲法答案では、教育権の所在(26条)や検閲の禁止(21条2項)との関係で、本判決が「一般図書としての発行を妨げないこと」を理由に合憲性を維持している点に留意する。
事件番号: 平成6(オ)1119 / 裁判年月日: 平成9年8月29日 / 結論: その他
一 教科用図書の検定に当たり文部大臣が原稿記述に訂正、削除又は追加などの措置をした方が教科用図書としてより良くなるものとして指摘する改善意見は、これに応ずることを合格の条件とはせず、文部大臣の助言、指導の性質を有するものであって、これを付することは、教科用図書の執筆者又は出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなる…