1 地方税法585条1項にいう「土地又はその取得」とは,経過的事実に則してとらえた土地の所有又はその所有権取得の事実をいい,所有権取得の原因となった法律行為が取消し,解除等により覆されたかどうかにかかわらない。 2 上告審は,不適法でその不備を補正することができない訴えを却下する前提として原判決を破棄する場合には,口頭弁論を経ないでその旨の判決をすることができる。
1 地方税法585条1項にいう「土地又はその取得」の意義 2 上告審が不適法でその不備を補正することができない訴えを却下する前提として原判決を破棄する場合における口頭弁論の要否
地方税法585条1項,民訴法87条,民訴法140条,民訴法297条,民訴法313条,民訴法319条
判旨
地方税法上の土地の取得・所有とは、形式的な所有権移転の事実を指し、原因行為が詐害行為として取り消された場合であっても、既になされた課税処分の要件が失われることはない。また、上告審において重複訴追として却下すべき訴えについては、口頭弁論を経ずに原判決を破棄し訴えを却下することができる。
問題の所在(論点)
1. 土地の売買契約が詐害行為として取り消された場合、当該土地の取得および所有に基づく特別土地保有税の課税要件に影響を及ぼすか。 2. 重複訴追(民訴法142条)に該当し不適法な訴えについて、上告審は口頭弁論を経ずに原判決を破棄して訴えを却下できるか。
規範
地方税法における土地の取得(585条1項)および所有とは、所有権移転の形式により土地を取得するすべての場合を含み、取得の原因となった法律行為が取消し・解除等により覆されたか否かにかかわりなく、その経過的事実に即して捉えた所有権取得の事実をいう。詐害行為取消権の行使(民法424条等)は相対的効力を有するにすぎず、当事者間での有効性や、過去に土地を所有していたという経過的事実そのものを否定するものではない。
重要事実
事件番号: 昭和60(行ツ)179 / 裁判年月日: 昭和63年4月21日 / 結論: 破棄差戻
乗用車の販売修理会社が、昭和五四年九月一〇日訴外会社の所有する社屋等の建物及びその敷地を買い受け(同年一二月二四日所有権移転登記、同月二五日引渡し)、翌年一月一六日右建物の解体工事に着手し、同年二月二〇日ごろこれを完了したうえ、右土地の東側部分をアスフアルト舗装して同年三月一〇日過ぎから右部分で中古車センターを開業した…
上告人は土地の売買契約に基づき所有権を取得し、これに対して特別土地保有税の課税処分を受けた。その後、当該売買契約が他の債権者によって詐害行為として取り消された。上告人は、取得の原因行為が取り消された以上、課税要件が失われたとして、更正の請求を拒絶した処分の取消しを求めて提訴した。さらに控訴審において、主位的請求と実質的に重複する予備的請求を追加提起した。
あてはめ
1. 特別土地保有税は、土地の移転や所有の事実自体に着目する流通税・財産税の性格を有し、土地から得られる収益に着目するものではない。本件では詐害行為取消訴訟により売買が取り消されたが、その効果は相対的であり、売主・買主間では売買は依然として有効である。したがって、買主が土地を取得し所有したという「経過的事実」は失われず、課税要件は充足されたままである。 2. 追加提起された予備的請求は主位的請求と重複しており、民訴法142条により不適法である。同法140条、313条等の趣旨に照らせば、補正不能な不適法な訴えを却下する場合、その前提となる原判決の破棄も口頭弁論を経ずに行うことが可能である。
結論
1. 詐害行為取消しは課税要件を失わせない。 2. 重複する予備的請求に係る訴えは不適法であり、口頭弁論を経ずに破棄・自判(却下)する。
実務上の射程
租税法上、課税原因となる「取得」等の概念を民事上の効力(特に遡及効や取消しの相対的効力)と切り離して「経過的事実」として捉える判断枠組みとして重要である。また、民事訴訟法上の重複起訴の禁止および上告審における口頭弁論を経ない判決の限界を示す実務的指針となる。
事件番号: 昭和40(行ツ)12 / 裁判年月日: 昭和45年10月23日 / 結論: 棄却
不動産を等価交換により取得した場合も、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたる。 参照 (一審判決、東京地裁昭和三八年一二月二八日、行裁例集一四巻一二号一五八)
事件番号: 昭和53(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和55年11月20日 / 結論: 棄却
一 省略 二 所得税法九六条ないし一〇一条の定める資産所得合算課税制度の合憲性を争う主張は、特定の法律における具体的な税額計算の定めに関する立法政策上の適不適を争うものにすぎず、違憲の問題を生ずるものでない。
事件番号: 昭和60(行ツ)42 / 裁判年月日: 昭和60年10月15日 / 結論: 棄却
地方税法五九五条は、共有土地に対して課する特別土地保有税については、その共有者全員を集合的に同一の者としてとらえ、その共有に係る土地の合計面積によつて免税点の判定を行うことを規定するものと解すべきである。
事件番号: 昭和45(行ツ)54 / 裁判年月日: 昭和48年11月2日 / 結論: 棄却
売買契約の合意解除に基づく売主の所有権の回復は、それが合意によるものであると解除権の行使によるものであるとにかかわらず、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたると解すべきである。