売買契約の合意解除に基づく売主の所有権の回復は、それが合意によるものであると解除権の行使によるものであるとにかかわらず、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたると解すべきである。
売買契約の解除に基づく売主の所有権の回復と地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」
地方税法73条の2第1項,地方税法(昭和45年法律第24号による改正前のもの)73条の7第12号の2
判旨
不動産取得税の課税対象となる「不動産の取得」とは、所有権移転の経過的事実を指すため、売買契約の合意解除に伴う所有権の復帰もこれに含まれる。
問題の所在(論点)
不動産の売買契約が解除(合意解除)され、所有権が売主に復帰した場合、それが地方税法73条の2第1項に規定する「不動産の取得」に該当し、不動産取得税の課税対象となるか。
規範
地方税法73条の2第1項にいう「不動産の取得」とは、所有権の得喪に関する法律効果の側面からではなく、その経過的事実に則してとらえた不動産所有権取得の事実をいう。不動産取得税は、不動産の移転という事実自体に着目して課せられる流通税であるため、解除権の行使か合意解除かを問わず、一旦移転した所有権が再び移転した場合はこれに該当する。
重要事実
上告人は不動産の売買契約を締結し、買主に所有権を移転させたが、その後、代金不払いを理由として当該売買契約を合意解除した。この合意解除に伴い所有権が上告人に復帰したことに対し、課税当局が不動産取得税を課したため、上告人がその取り消しを求めて争った。
事件番号: 昭和42(行ツ)58 / 裁判年月日: 昭和48年11月2日 / 結論: 棄却
売買契約の合意解除に基づく売主の所有権の回復も地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたると解すべきである。
あてはめ
不動産取得税の本質は、不動産の移転という事実自体に着目する流通税である。本件では、売買契約の解除によって、一旦買主に移転した所有権が再び売主に復帰するという「経過的事実」が存在する。解除によって法律上遡及的に所有権移転がなかったものとされるとしても、事実上の所有権の移転(復帰)があった以上、それは「不動産の取得」に当たると評価される。また、法が特定の公法人による解除時の取得のみを非課税としていることも、解除による取得が原則として課税対象であることを裏付けている。
結論
本件売買契約の合意解除に基づく所有権の回復は「不動産の取得」に該当し、不動産取得税を課することは適法である。
実務上の射程
契約の遡及的消滅という民法上の効果にかかわらず、税法独自の観点から「移転の事実」を重視する判断枠組み。合意解除のみならず、法定解除権の行使による復帰であっても、同様に課税対象となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和40(行ツ)12 / 裁判年月日: 昭和45年10月23日 / 結論: 棄却
不動産を等価交換により取得した場合も、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたる。 参照 (一審判決、東京地裁昭和三八年一二月二八日、行裁例集一四巻一二号一五八)
事件番号: 昭和43(行ツ)90 / 裁判年月日: 昭和48年11月16日 / 結論: 破棄自判
一、昭和三六年法律第七四号による改正前の地方税法のもとにおいても、譲渡担保による不動産の取得は、同法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたる。 二、昭和三六年法律第七四号による改正前の地方税法のもとにおいて、譲渡担保による不動産の取得につき、同法七三条の七第三号は類推適用されない。
事件番号: 昭和51(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和53年4月11日 / 結論: 棄却
共有不動産の分割により他の共有者の有していた持分を取得することは、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたる。
事件番号: 昭和59(行ツ)299 / 裁判年月日: 昭和62年1月22日 / 結論: 棄却
相続土地の共有持分の取得が相続人らにおいて第一回遺産分割協議を合意解除し改めて第二回遺産分割協議をしたことに伴うものである場合には、右取得は地方税法七三条の七第一号にいう「相続に因る不動産の取得」に該当する。