共有不動産の分割により他の共有者の有していた持分を取得することは、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたる。
共有不動産の分割と地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」
地方税法73条の2第1項,民法256条
判旨
不動産取得税の課税対象となる「不動産の取得」とは、所有権移転の形式により不動産を取得するすべての場合をいい、共有物の分割によって他の共有者の持分を取得することもこれに含まれる。
問題の所在(論点)
共有物の分割により他の共有者の持分を取得することが、地方税法73条の2第1項に規定される「不動産の取得」に該当するか。不動産取得税の性質に照らして、経済的利益の増加を要件とすべきかが問題となる。
規範
地方税法73条の2第1項にいう「不動産の取得」とは、所有権移転の形式により不動産を取得するすべての場合を指す。不動産取得税は流通税としての性質を有し、移転の事実自体に着目して課されるため、経済的利益の増加の有無は問わない。また、共有物の分割は、共有者相互間における持分の交換または売買としての性質を有するため、これにより他者の持分を取得することも「不動産の取得」に該当する。
重要事実
上告人は、訴外Dとの共有不動産について、共有物の分割を行った。その結果、上告人は当該不動産のうち、従前は訴外Dが有していた共有持分を取得するに至った。これに対し、課税当局が不動産取得税を課したため、上告人は「経済的利益の増加がない」等と主張してその取消しを求めて争った。
事件番号: 令和3(行ヒ)62 / 裁判年月日: 令和4年3月22日 / 結論: 棄却
複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割により不動産を取得した場合における地方税法73条の7第2号の3括弧書きに規定する「当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分」の有無及び額については,分割の対象とされた個々の不動産ごとに,分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することとな…
あてはめ
不動産取得税は、不動産所有権の移転という法形式的な事実を課税客体とする流通税である。本件において、上告人は共有物分割という手続きを経て、訴外Dが有していた持分を承継取得している。これは、共有者間での持分の交換・売買が行われたのと同視できる形式的な所有権の移転である。したがって、上告人に実質的な経済的利益の増加が生じているか否かにかかわらず、右規定の「不動産の取得」があったと評価される。
結論
共有物の分割による他の共有持分の取得は、地方税法73条の2第1項にいう「不動産の取得」にあたる。したがって、課税処分は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
不動産取得税が「形式的な移転」に着目する流通税であることを明確にした射程の広い判例である。答案上では、不動産取得税の課税要件を論じる際、実質的な利益の有無に関わらず、所有権移転という形式的要件が満たされれば原則として課税対象となることを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和45(行ツ)54 / 裁判年月日: 昭和48年11月2日 / 結論: 棄却
売買契約の合意解除に基づく売主の所有権の回復は、それが合意によるものであると解除権の行使によるものであるとにかかわらず、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたると解すべきである。
事件番号: 平成4(行ツ)196 / 裁判年月日: 平成6年4月21日 / 結論: 破棄自判
地方税法七三条の二一第一項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、当該不動産につき、固定資産税の賦課期日後に増築、改築、損壊、地目の変換その他特別の事情が生じ、その結果、固定資産課税台帳に登録された価格が当該不動産の適正な時価を示しているものということができないため、右登録価格を不動産取得税の課税標準と…
事件番号: 昭和40(行ツ)12 / 裁判年月日: 昭和45年10月23日 / 結論: 棄却
不動産を等価交換により取得した場合も、地方税法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたる。 参照 (一審判決、東京地裁昭和三八年一二月二八日、行裁例集一四巻一二号一五八)
事件番号: 昭和43(行ツ)90 / 裁判年月日: 昭和48年11月16日 / 結論: 破棄自判
一、昭和三六年法律第七四号による改正前の地方税法のもとにおいても、譲渡担保による不動産の取得は、同法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」にあたる。 二、昭和三六年法律第七四号による改正前の地方税法のもとにおいて、譲渡担保による不動産の取得につき、同法七三条の七第三号は類推適用されない。