森林法一〇条の二に基づく林地開発行為の許可処分につき、許可区域周辺に居住する多数の原告が、右開発行為により、同区域周辺の水質の悪化、水量の変化、大気汚染、その他の環境悪化を生じ、原告らの水利権、人格権、不動産所有権等が害されるおそれがあるところ、右処分には同条二項所定の不許可事由があるのにされた違法があるなどと主張して、右処分の取消しを求める訴訟においては、各原告が訴えで主張する利益は全員に共通であるとはいえず、控訴の提起の手数料の額は、右利益によって算定される訴訟の目的の価額とみなされる九五万円を合算した額に応じて算出すべきである。
多数の周辺住民が提起した林地開発行為許可処分取消訴訟における控訴提起の手数料額の算定
民事訴訟費用等に関する法律4条1項,民事訴訟費用等に関する法律4条2項,民事訴訟費用等に関する法律別表第1,民訴法8条1項,民訴法9条1項,森林法10条の2第1項,森林法10条の2第2項
判旨
多数の者が共同して取消訴訟を提起する場合、各原告が主張する利益が水利権や人格権等であるときは、各人の利益は共通とはいえず、手数料算出の基礎となる訴訟の目的の価額は各原告の利益を合算して算定すべきである。
問題の所在(論点)
取消訴訟において多数の者が共同して処分の取消しを求める場合、各原告の主張する利益が「共通」であるとして、手数料算出における訴訟の目的の価額の合算が免除されるか(費用法4条1項の解釈)。
規範
1. 訴訟の目的の価額は、原則として各原告が主張する利益を合算して算定する(民事訴訟費用等に関する法律4条1項、民訴法9条1項)。 2. 例外的に「訴えで主張する利益が各請求について共通である場合」は合算を要しないが、この「共通」とは、各原告の有する個別の利益そのものが一体不可分であることを要する。
重要事実
事件番号: 平成16(行フ)5 / 裁判年月日: 平成17年3月29日 / 結論: 破棄自判
同一の敷地にあって一つのリゾートホテルを構成している同一人所有の複数の建物について,固定資産課税台帳に登録された同一年度の価格につき需給事情による減点補正がされていないのは違法であるとしてされた審査の申出を棄却する固定資産評価審査委員会の決定のうち,所有者が各建物の適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求める各…
住民ら245名が、周辺環境の悪化による水利権、人格権、不動産所有権の侵害を理由として、林地開発許可処分の取消しを求めて共同で提訴した。原審裁判長は、各人の訴訟の目的の価額を95万円とみなした上で、これらを合算した金額に基づき算出した控訴提起手数料の追納を命じた。これに対し、抗告人らは、主張する利益は全員に共通であり合算すべきではないと主張して、手数料不足を理由とする控訴状却下命令を不服として抗告した。
あてはめ
1. 本件訴訟で各原告が主張する利益は、本件処分の取消しによって回復される各人の水利権、人格権、不動産所有権等の一部を成す利益である。 2. これらの利益は、その性質上、各原告がそれぞれ個別に有するものであって、原告全員に一体として帰属する共通の利益とはいえない。 3. したがって、訴訟の目的の価額は、算定困難として各95万円とみなされる各原告の利益を合算して算定すべきであり、これを基礎とした手数料の追納命令は適法である。
結論
各原告の主張する利益は共通とはいえないため、訴訟の目的の価額を合算して手数料を算出することになり、追納に応じなかった原告らの控訴を却下した命令は正当である。
実務上の射程
環境訴訟や消費者訴訟等、多数人が共同して同一処分の取消しを求める訴訟において、訴額算定の基本原則(合算原則)を確認したものである。実務上、共同提訴による手数料の逓減効果はあるものの、「1人分で済む」という主張は認められないことを明示しており、訴訟費用の予見可能性を高める基準として機能する。
事件番号: 令和5(許)1 / 裁判年月日: 令和5年10月19日 / 結論: 破棄差戻
1 共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合において、訴え提起の手数料につき各原告に対する訴訟上の救助の付与対象となるべき額は、上記訴訟の目的の価額を基礎として算出される訴え提起の手数料の額を各原告の請求の価額に応じて案分して得た額に限られる。 2 共同して訴えを提起した各原告…
事件番号: 令和2(行フ)2 / 裁判年月日: 令和3年4月27日 / 結論: 棄却
特別区選挙管理委員会による特別区議会議員選挙に係る当選人甲の当選無効の決定の取消しを求める請求及び都選挙管理委員会による同決定に対する審査の申立てを棄却するとの裁決の取消しを求める請求と,当選人乙の当選無効を求める請求とでは,訴えで主張する利益が共通であるとはいえない。
事件番号: 令和5(許)9 / 裁判年月日: 令和5年10月6日 / 結論: 破棄差戻
1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、当該債権者において当該一部分について分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部…
事件番号: 平成23(許)13 / 裁判年月日: 平成23年5月30日 / 結論: 破棄自判
民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟であって,いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて,同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない。