財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第2条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律は,憲法14条,29条3項,98条に違反するということはできない。
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第2条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律と憲法14条,29条3項,98条
憲法14条,憲法29条3項,憲法98条,財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第2条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律
判旨
旧朝鮮出身の軍属らが被った戦争犠牲や敗戦に伴う請求権の消滅に係る損害は、憲法各条項が予想しない「戦争損害」等に属し、その補償の要否は立法府の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
旧朝鮮出身の軍属らが被った戦犯裁判による損害や、日韓請求権協定に基づく未払給与債権の消滅について、憲法上の補償規定を根拠に救済を求めることができるか。また、これらの損害に対する補償の要否に関する立法府の裁量の有無が問題となる。
規範
第2次世界大戦及びその敗戦によって生じた戦争犠牲ないし戦争損害に対する補償は、憲法13条、14条、25条、29条3項等の予想しないところである。したがって、その補償の要否及びその在り方については、国家財政、社会経済、損害の内容・程度等の資料を基礎とする立法府の裁量的判断に委ねられる。また、敗戦に伴う国家間の財産処理(日韓請求権協定等)に伴う財産権の消滅についても、同様に憲法の予想しないものであり、立法府の裁量が認められる。
重要事実
旧日本軍の軍属として採用された朝鮮出身者(上告人ら)は、戦後、連合国から戦犯として死刑執行や拘禁等の損害を被った。また、上告人の一人(A1)は軍属勤務の対価としての未払給与債権を有していたが、日韓請求権協定及び同協定の実施に伴う措置法により、当該債権は消滅したものとされた。上告人らは、これらの損害や債権消滅に対して補償がなされないことは憲法13条、14条、25条、29条3項等に違反すると主張した。
事件番号: 平成15(オ)1895 / 裁判年月日: 平成16年11月29日 / 結論: 棄却
1 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,旧日本軍の軍人軍属等であったが日本国との平和条約により日本国籍を喪失した大韓民国に在住する韓国人に対して何らかの措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項,恩給法9条1項3号を存置したこ…
あてはめ
上告人らが被った損害は、戦争そのもの又は敗戦後の特殊な事態に起因する「戦争犠牲」ないし「戦争損害」に属する。上告人らの犠牲が深刻かつ甚大であることを考慮しても、それらは一般の戦争損害と性質を異にするものではない。また、措置法による債権消滅も敗戦に伴う国家間の財産処理という特殊な文脈で行われたものである。これらは憲法が当初から想定した枠組みを超えた事態であり、補償の具体的内容は、国の財政状況等を踏まえた立法府の裁量に委ねられるべき事柄であるため、現時点で憲法違反とはいえない。
結論
上告人らの損害は戦争損害に属し、立法府の裁量事項であるため、補償を認めなかった原審の判断は正当であり、憲法違反には当たらない。
実務上の射程
戦争損害(一般犠牲)については、原則として憲法29条3項等の補償規定の適用外であり、立法府に広範な裁量を認める「戦争損害受忍論」を再確認した判例である。答案上は、特別の犠牲(29条3項)の成否が争われる事案において、戦争という非常事態に起因する損害を一般の損失補償と区別する際の根拠として用いる。
事件番号: 平成12(行ツ)106 / 裁判年月日: 平成13年11月16日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)を受けて,旧日本軍の軍人であったが日本国との平和条約により日本国籍を喪失した大韓民国に在住する韓国人について恩給法9条1項3号を存置することとし,その後も存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはで…
事件番号: 平成12(行ツ)191 / 裁判年月日: 平成14年7月18日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人である旧軍人等に対して何らかの措置を講ずることなく恩給法9条1項3号を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。