労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定と抗告訴訟の対象
労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条,労働者災害補償保険法施行規則(平成12年労働省令第2号による改正前のもの)1条3項,行政事件訴訟法3条
判旨
労災就学援護費の不支給決定は、所定の要件を具備する者に支給請求権を発生させる公権力の行使であり、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
問題の所在(論点)
労働者災害補償保険法23条に基づく労働福祉事業の一環として行われる労災就学援護費の支給・不支給の決定が、抗告訴訟の対象となる「行政処分」に該当するか。
規範
行政庁の行為が「行政処分」(行政事件訴訟法3条2項)に当たるかは、その行為が①公権力の行使として行われるものであること、及び②国民の権利義務を直接に形成し、又はその範囲を確定する法律上の効果を有するものであるかによって判断すべきである。
重要事実
労災保険法の遺族補償年金受給者である上告人が、外国大学に進学した子の学資として労災就学援護費を申請したが、労働基準監督署長は対象校に当たらないとして不支給決定(本件決定)を行った。労災就学援護費は法23条の「労働福祉事業」として、通達に基づき支給要件や手続が定められている。原審は、同援護費が反射的利益に過ぎず処分性がないとして訴えを却下したため、上告した。
事件番号: 平成11(行ヒ)99 / 裁判年月日: 平成15年9月4日
【結論(判旨の要点)】労災就学援護費の支給または不支給の決定は、法に基づき公権力の行使として一方的に行われ、申請者の権利義務に直接影響を及ぼす法的効果を有するため、行政処分にあたる。 第1 事案の概要:労災保険法の遺族補償年金受給者である上告人は、外国大学に進学した子の学資のため労災就学援護費の支給申請をしたが、労働基…
あてはめ
労災就学援護費制度は、政府が保険給付を補完するために、保険給付と同様の手続により行うものである。支給要綱によれば、所定の要件を具備する者は所定額の支給を受ける抽象的な地位を有しているが、具体的な請求権は労働基準監督署長の支給決定によって初めて取得される。したがって、署長による支給・不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づき一方的に行う「公権力の行使(①)」であり、申請者の権利に直接影響を及ぼす「法的効果(②)」を有する。
結論
労災就学援護費の不支給決定は、行政処分に該当する。そのため、本件訴えを却下した原判決を取り消し、審理のため差し戻す。
実務上の射程
本判決は、法律上「行うことができる」とされる裁量的な給付事業(労働福祉事業)であっても、要件が明確化され、行政庁の決定を経て初めて具体的権利が発生する仕組みである場合には、その決定に処分性を認めることを示した。給付管理的な行政作用における処分性を広く認める方向性の実務を確立するものである。
事件番号: 昭和43(行ツ)114 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正後)八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。
事件番号: 令和5(行ヒ)108 / 裁判年月日: 令和6年7月4日 / 結論: 破棄自判
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(令和2年法律第14号による改正前のもの)12条3項所定の事業の事業主は、当該事業についてされた同項所定の労働者災害補償保険法(令和2年法律第14号による改正前のもの)の規定による業務災害に関する保険給付の支給決定の取消訴訟の原告適格を有しない。
事件番号: 昭和58(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和58年10月13日 / 結論: 破棄差戻
労働者災害補償保険法一四条一項所定の休業補償給付は、労働者が業務上の傷病による療養のため労働不能の状態にあつて賃金を受けることができない場合であれば、休日、出勤停止の懲戒処分等のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても、支給される。