労働者災害補償保険法一四条一項所定の休業補償給付は、労働者が業務上の傷病による療養のため労働不能の状態にあつて賃金を受けることができない場合であれば、休日、出勤停止の懲戒処分等のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても、支給される。
休日、出勤停止の懲戒処分等のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日と労働者災害補償保険法一四条一項所定の休業補償給付の支給
労働者災害補償保険法14条1項
判旨
労働者災害補償保険法14条1項の休業補償給付は、療養のため労働不能で賃金を受けられない場合に支給されるものであり、公休日や出勤停止処分により賃金請求権がない日であっても支給対象となる。
問題の所在(論点)
労災保険法14条1項にいう「賃金を受けない日」の意義が問題となる。具体的には、公休日や懲戒出勤停止処分によって私法上の賃金請求権がそもそも発生しない日であっても、同条の休業補償給付の対象に含まれるか。
規範
労働者災害補償保険法14条1項に基づく休業補償給付の支給要件は、①労働者が業務上の傷病により療養のため労働不能の状態にあること、および②そのために賃金を受けられないことである。この要件を具備する限り、雇用契約上の賃金請求権の有無は問わない。したがって、公休日や懲戒処分としての出勤停止期間中であっても、上記要件を満たせば給付の対象となる。
重要事実
労働者である上告人は、業務中の暴行により負傷し療養のため休業した。上告人は休業期間につき休業補償給付を請求したが、労働基準監督署長(被上告人)は不支給決定を下した。その理由の一つとして、休業期間のうち、会社の公休日および負傷事故を理由とする懲戒出勤停止期間については、もともと賃金請求権が発生しない日であるから「賃金の喪失」がなく、給付対象にならないと判断された。
事件番号: 平成4(行ツ)68 / 裁判年月日: 平成7年7月6日 / 結論: 破棄自判
労働者災害補償保険法による保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をした日から三箇月を経過しても決定がないときは、審査請求に対する決定及び労働保険審査会に対する再審査請求の手続を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
あてはめ
休業補償給付は、業務上の傷病による労働不能に伴う所得喪失を補償する趣旨の制度である。本件において、上告人は業務上の負傷の療養のために労働不能の状態にあり、実際に賃金を得ていない。たとえその日が会社の公休日であったり、懲戒による出勤停止期間中であったりして私法上の賃金請求権が認められない場合であっても、療養のため労働不能であって現に賃金を受けていないという実態がある以上、同法14条1項の要件を具備しているといえる。したがって、これらを除外した原審の判断は法の解釈を誤っている。
結論
公休日や出勤停止の懲戒処分を受けた日であっても、療養のため労働不能で賃金を受けていないのであれば、休業補償給付の支給対象となる。
実務上の射程
本判決は、労災保険給付が私法上の賃金債権の有無に直結するものではなく、療養による労働不能という実態を重視することを明らかにした。答案作成上は、休業補償給付の要件検討において、会社のカレンダーや懲戒処分の有無にかかわらず、業務災害と労働不能・無給状態の因果関係があれば足りるという文脈で使用する。社会保障の性質から、民法上の論理を機械的に適用すべきでない場面の例証として有用である。
事件番号: 昭和54(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和54年12月7日 / 結論: 棄却
山間僻地の発電所に勤務し右発電所と私宅間を社有車(日曜日等は社有車及びバス)を利用して通勤している者が、バスに乗り遅れ自己所有の原動機付自転車により出勤する途中受けた災害は、右の通勤方法が健に合理的な交通手段がないためのやむをえない代替方法といえるなど判示の事情のもとにおいては、使用者の支配管理下におかれているとみられ…
事件番号: 平成8(オ)1026 / 裁判年月日: 平成12年3月31日 / 結論: 破棄差戻
事業遂行に必要な技術者の養成と能力向上を図るため、各職場の代表者を参加させて、一箇月に満たない比較的短期間に集中的に高度な知識、技能を修得させ、これを職場に持ち帰らせることによって、各職場全体の業務の改善、向上に資することを目的として行われた訓練の期間中に、訓練に参加している労働者から年次有給休暇が請求されたときは、使…
事件番号: 令和5(行ヒ)108 / 裁判年月日: 令和6年7月4日 / 結論: 破棄自判
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(令和2年法律第14号による改正前のもの)12条3項所定の事業の事業主は、当該事業についてされた同項所定の労働者災害補償保険法(令和2年法律第14号による改正前のもの)の規定による業務災害に関する保険給付の支給決定の取消訴訟の原告適格を有しない。
事件番号: 平成17(行ヒ)145 / 裁判年月日: 平成19年6月28日 / 結論: 棄却
作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が,特定の会社が請け負っていたマンションの内装工事に従事していた場合において,(1)上記大工は,自分の判断で上記工事に関する具体的な工法や作業手順を選択することができたこと,(2)上記大工は,事前に同社の現場監督に連絡すれば,工期に遅れない限り,仕事…