判旨
労災就学援護費の支給または不支給の決定は、法に基づき公権力の行使として一方的に行われ、申請者の権利義務に直接影響を及ぼす法的効果を有するため、行政処分にあたる。
問題の所在(論点)
労働者災害補償保険法23条に基づく労働福祉事業の一環として行われる「労災就学援護費」の支給・不支給の決定が、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分」に該当するか。
規範
行政事件訴訟法上の「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。具体的には、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものを指す(公権力性・法的効果性)。
重要事実
労災保険法の遺族補償年金受給者である上告人は、外国大学に進学した子の学資のため労災就学援護費の支給申請をしたが、労働基準監督署長より、当該大学が学校教育法上の学校に当たらないとして不支給決定を受けた。これに対し、上告人が当該決定の取消しを求めて提訴したところ、原審は、当該決定が抗告訴訟の対象となる「行政処分」に該当しないとして訴えを却下した。
あてはめ
労災保険法および関係規則・通達の仕組みによれば、労災就学援護費は保険給付を補完する性質を有し、所定の要件を具備する者に対し所定額を支給するものとされている。申請者は、要件を具備する場合には支給を受ける抽象的な地位を与えられているが、労働基準監督署長の支給決定があって初めて具体的な支給請求権を取得する。したがって、当該決定は、法を根拠とする優越的地位に基づき一方的に行われる公権力の行使であり、被災労働者らの具体的権利に直接影響を及ぼす法的効果を有する(行政処分性あり)。
結論
労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。したがって、不支給決定を処分ではないとして訴えを却下した原判決は破棄されるべきである。
事件番号: 平成11(行ヒ)99 / 裁判年月日: 平成15年9月4日 / 結論: 破棄自判
労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
実務上の射程
「労働福祉事業」という行政の給付的・裁量的性格が強い分野であっても、法令等で支給要件や手続が詳細に定められ、決定によって具体的権利が画定される仕組みとなっている場合には、処分性を認めるという判断枠組みを示した点に意義がある。答案では、単なる補助金・助成金との違いを、根拠法令の仕組み(保険給付との補完関係、支給手続の法定)から論証する際に引用する。
事件番号: 昭和58(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和58年10月13日 / 結論: 破棄差戻
労働者災害補償保険法一四条一項所定の休業補償給付は、労働者が業務上の傷病による療養のため労働不能の状態にあつて賃金を受けることができない場合であれば、休日、出勤停止の懲戒処分等のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても、支給される。
事件番号: 昭和43(行ツ)114 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正後)八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。
事件番号: 令和5(行ヒ)108 / 裁判年月日: 令和6年7月4日 / 結論: 破棄自判
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(令和2年法律第14号による改正前のもの)12条3項所定の事業の事業主は、当該事業についてされた同項所定の労働者災害補償保険法(令和2年法律第14号による改正前のもの)の規定による業務災害に関する保険給付の支給決定の取消訴訟の原告適格を有しない。