「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができる。
「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記
民法177条,民法908条,民法985条
判旨
「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は、法定相続分による相続等と本質において異ならないため、受遺者は当該遺言により取得した不動産の権利について、登記なくして第三者に対抗することができる。
問題の所在(論点)
「相続させる」旨の遺言により取得した不動産の権利を、登記なくして第三者(債権者等)に対抗できるか。同遺言の性質と民法177条の関係が問題となる。
規範
「相続させる」趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せず、被相続人の死亡時に直ちに当該遺産が当該相続人に承継される。かかる権利移転は、法定相続分又は指定相続分による相続と本質において異ならないため、民法177条の「対抗要件」の規定は適用されず、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる。
重要事実
被相続人Dは、不動産を妻(被上告人)に「相続させる」旨の遺言を遺した。これに対し、法定相続人の一人であるEの債権者(上告人ら)は、Eに代位して法定相続分による相続登記を経由した上で、Eの持分を仮差押え・差し押さえた。これを受けて被上告人が、差押え等の排除を求めて第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
本件遺言は「相続させる」旨の遺言であり、これによる被上告人の権利取得は法定相続の場合と本質を同じくする包括的な権利承継である。そのため、不動産登記法上の対抗関係(民法177条)を問題とするまでもなく、被上告人は遺言に基づき直ちに権利を取得し、それを登記なくして債権者である上告人らに対抗し得る。したがって、上告人らによる差し押さえは、被上告人の所有権を侵害するものであると解される。
結論
被上告人は、本件遺言によって取得した権利を登記なくして上告人らに対抗できる。したがって、上告人らによる強制執行の排除を求める請求は認められる。
実務上の射程
本判決は、平成30年相続法改正(民法899条の2第1項)により実務上の射程が限定されている。現在は、法定相続分を超える部分については「登記をしなければ」第三者に対抗できないと規定されたため、答案作成時は現行法の条文を優先しつつ、改正前事案か否かに注意して論じる必要がある。
事件番号: 昭和36(オ)338 / 裁判年月日: 昭和39年3月6日 / 結論: 棄却
甲からその所有不動産の遺贈を受けた乙がその旨の所有権移転登記をしない間に、甲の相続人の一人である丙に対する債権者丁が、丙に代位して同人のために前記不動産につき相続による持分取得の登記をなし、ついでこれに対し強制競売の申立をなし、該申立が登記簿に記入された場合においては、丁は、民法第一七七条にいう第三者に該当する。