地方議会議員の除名処分の効力停止決定がされることによって、除名による欠員が生じたことに基づいて行われた繰上補充による当選人の定めはその根拠を失うことになり、選挙管理委員会は、右当選人の定めを撤回し、その当選を将来に向かって無効とすべき義務を負う。
地方議会議員の除名処分の効力停止決定と除名に基づく繰上補充による当選の効力
地方自治法135条1項4号,行政事件訴訟法25条2項,行政事件訴訟法33条1項,行政事件訴訟法33条4項,公職選挙法112条5項
判旨
議会議員に対する除名処分の効力停止決定がなされた場合、当該処分は将来に向かって存在しない状態となり、処分の効力を前提になされた繰上補充による当選は根拠を失う。そのため、関係行政庁は効力停止決定の拘束力により、当該当選を撤回し将来に向かって無効とすべき義務を負う。
問題の所在(論点)
議員に対する除名処分の効力停止決定がなされた場合、当該処分によって生じた欠員を補充するための「繰上補充による当選」の効力は、効力停止決定の拘束力(行訴法33条1項)によってどのように影響を受けるか。
規範
行政事件訴訟法32条(現33条1項)が定める執行停止決定の拘束力により、関係行政庁は決定の趣旨に従って行動すべき義務を負う。処分の効力を停止する決定がなされた場合、当該処分を前提として生じた後続の状態はその根拠を失うため、行政庁はこれを是正する措置を講じなければならない。
重要事実
川島町議会議員が除名処分を受けたことに伴い、欠員が生じたとして繰上補充による当選人の決定(当選人の定め)が行われた。その後、当該除名処分について裁判所による効力停止決定がなされたため、除名された議員の地位が回復し、繰上補充の適法性が問題となった。
事件番号: 平成29(行フ)3 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 破棄自判
村議会の議員である者につき地方自治法92条の2の規定に該当する旨の決定がされ,その補欠選挙が行われた場合において,同選挙は上記決定の効力が停止された後に行われたものであったが,同選挙及び当選の効力に関し公職選挙法所定の期間内に異議の申出がされなかったという事実関係の下では,上記の者は,上記決定の取消判決を得ても,上記議…
あてはめ
除名処分の効力停止決定により、同処分の効力は将来に向かって存在しない状態となり、相手方の議員としての地位が回復する。この場合、除名による欠員を前提として行われた繰上補充は、法的な存立根拠を失うことになる。したがって、関係行政庁である選挙管理委員会は、効力停止決定の拘束力に服し、当該繰上補充を撤回して当選を将来に向かって無効とする義務を負うと解される。
結論
除名処分の効力停止決定がなされた以上、これと両立し得ない繰上補充の当選は根拠を失い、選挙管理委員会は当該当選を撤回し無効とすべき義務を負う。
実務上の射程
執行停止(効力停止)の拘束力が、当該処分を直接の前提としてなされた第三者の権利義務に関わる後続の行政処分(繰上補充等)にまで及ぶことを認めた。答案上は、執行停止の拘束力の具体的な内容や、処分の存立根拠が事後的に失われた場合の行政庁の作為義務を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(ク)109 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
行政事件訴訟特例法第一〇条第二項但書の内閣総理大臣の異議は、同項本文による裁判所の執行停止決定前に述べられることを要し、その後に述べられた異議は不適法である。
事件番号: 平成22(行ト)63 / 裁判年月日: 平成22年11月25日 / 結論: 棄却
検察審査会法41条の6第1項所定の検察審査会による起訴をすべき旨の議決の適否については,行政事件訴訟を提起して争うことはできず,これを本案とする行政事件訴訟法25条2項の執行停止の申立てをすることもできない。
事件番号: 平成14(行フ)11 / 裁判年月日: 平成15年3月11日 / 結論: 破棄自判
弁護士に対する戒告処分が日本弁護士連合会会則97条の3第1項に基づく公告を介して第三者の知るところとなり弁護士としての社会的信用が低下するなどの事態は,行政事件訴訟法25条2項にいう「処分により生ずる回復の困難な損害」に当たらない。
事件番号: 平成14(行フ)1 / 裁判年月日: 平成14年2月28日 / 結論: 棄却
収容令書の執行により収容された者に対し,退去強制令書が発付され,その執行がされた場合,収容令書の執行停止を求める申立ての利益は失われる。