風俗営業の名義貸しは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成一〇年法律第五五号による改正前のもの)の立法目的を著しく害するおそれがあるとはいい難いような特段の事情のない限り、同法二六条一項にいう「著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」場合に当たり、公安委員会は、右名義貸しをした者に対する風俗営業の許可を取り消すことができる。
風俗営業の名義貸しと風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成一〇年法律第五五号による改正前のもの)二六条一項に基づく風俗営業の許可の取消し
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律11条,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成10年法律第55号による改正前のもの)26条1項
判旨
風俗営業許可の取消要件である「著しく善良の風俗等を害するおそれ」(法26条1項)は、名義貸しの場合、その行為の類型的特質から、特段の事情のない限り当該要件を充足すると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律26条1項における、いわゆる第二要件(著しく善良の風俗等を害するおそれ)の存否につき、名義貸しという違反行為の性質をいかに考慮すべきか。
規範
法26条1項による許可取消には、①法令違反等の事実(第一要件)と、②著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれ(第二要件)の双方が必要である。もっとも、法11条違反の名義貸しは、風俗営業許可制度を根底から危うくし、公安委員会の監督を逃れる無許可営業を助長・隠ぺいする類型の行為である。したがって、形式的な名義貸しにすぎず法の目的を害するおそれがないといえるような特段の事情がない限り、名義貸しが行われれば第二要件を充足するものと解される。
重要事実
事件番号: 昭和60(行ツ)197 / 裁判年月日: 平成元年3月7日 / 結論: 棄却
公衆浴場法二条二項及び大阪府公衆浴場法施行条例二条は、憲法二二条一項に違反しない。
風俗営業者Xは、夫Eを介して訴外会社に対し、店舗を賃貸するとともに自己の名義を使用してぱちんこ屋を営むことを許諾した。訴外会社は約2年間にわたり無許可で営業を継続したが、摘発により営業を廃止した。上告人(大阪府公安委員会)は、名義貸し(法11条違反)を理由として、法26条1項に基づきXの風俗営業許可を取り消した。Xは、名義貸し以外に風俗を害する具体的な違反行為はないとして、第二要件を欠き処分は違法であると主張した。
あてはめ
本件におけるXの行為は法11条に違反する名義貸しであり、これは許可制度を潜脱して無許可営業を助長する悪質な行為である。このような行為は、その類型的特質からして、特段の事情がない限り「著しく善良の風俗等を害するおそれ」があるといえる。X側において、本件が形式的な名義貸しにすぎず立法目的を害するおそれがないといった「特段の事情」についての主張立証はない。したがって、名義貸し以外の具体的な違反行為がないとしても、第二要件は充足されると判断される。
結論
本件処分に取消事由としての要件欠缺の違法はなく、被上告人(X)の請求を棄却すべきである。
実務上の射程
行政法上の許可取消要件の解釈において、条文上独立した要件であっても、違反行為の類型的性質によってその要件が事実上推認(または蓋然性が肯定)される枠組みを示したものとして重要。名義貸し事案においては、原則として取消しが可能であり、原告側に「特段の事情」の主張立証責任を転換させる実務上の機能を持つ。
事件番号: 平成8(行ツ)271 / 裁判年月日: 平成10年12月17日 / 結論: 棄却
風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律施行令六条一号イの定める基準に従って規定された都道府県の条例所定の風俗営業制限地域に居住する者は、同地域内における風俗営業許可処分の取消しを求める原告適格を有しない。
事件番号: 昭和26(オ)853 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第三者に対する公衆浴場営業許可処分は、上告人の居住の自由を侵害するものではなく、憲法違反の主張は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、第三者に対してなされた公衆浴場営業許可処分の取消しを求めた。上告人は、当該許可処分が自己の居住の自由を侵害し、憲法に違反するものであると主張して…
事件番号: 昭和50(あ)24 / 裁判年月日: 昭和53年6月16日 / 結論: 破棄自判
個室付浴場業(いわゆるトルコぶろ営業)の規制を主たる動機、目的とする知事の本件児童遊園設置認可処分(判文参照)は、行政権の濫用に相当する違法性があり、個室付浴場業を規制しうる効力を有しない。