一 郵便物中の信書以外の物についてわいせつ表現物の流入阻止の目的で行われる税関検査は、憲法一三条に違反しない。 二 郵便物中のわいせつ表現物の輸入規制に伴うその留置の措置は、憲法二九条、三一条に違反しない。
一 郵便物中の信書以外の物についてわいせつ表現物の流入阻止の目的で行われる税関検査と憲法一三条 二 郵便物中のわいせつ表現物の輸入規制に伴うその留置の措置と憲法二九条、三一条
関税定率法21条1項3号,関税法76条,憲法13条,憲法29条,憲法31条
判旨
税関検査によるわいせつ表現物の輸入規制は、憲法21条2項が禁じる「検閲」に当たらず、同条1項、13条、21条2項後段、29条、31条のいずれにも違反しない。信書以外の郵便物に対する検査は、健全な性風俗の維持という公共の福祉に基づくやむを得ない制約として許容される。
問題の所在(論点)
1.税関検査が憲法21条2項前段の「検閲」に当たるか。2.「風俗を害すべき貨物」という規定が不明確ゆえに違憲か。3.信書以外の郵便物への検査が13条や21条2項後段(信書の秘密)に反するか。
規範
憲法21条2項前段の「検閲」とは、行政権が主体となり、表現物の発表の禁止を目的として、対象を網羅的一般的に発表前に審査し、不適当なものの発表を禁止する特質を備えるものを指す。また、プライバシーの利益(13条)や財産権(29条)も絶対無制限ではなく、公共の福祉による合理的な制約に服する。
重要事実
上告人宛に海外から送付された雑誌に関し、税関長が関税定率法に基づき「風俗を害すべき貨物」に該当するとして通知を行った。これにより、上告人は当該郵便物の配達を受けられなくなったため、当該規制や税関検査が表現の自由、検閲の禁止、信書の秘密、プライバシー権、財産権等を侵害し違憲であると主張して争った。
事件番号: 昭和57(行ツ)156 / 裁判年月日: 昭和59年12月12日 / 結論: 棄却
一 関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたる。 二 憲法二一条二項前段の検閲禁止は、公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない趣旨と解すべきである。 三 憲法二一条二項にいう「検閲」とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を…
あてはめ
税関検査は、輸入が制限される貨物の流入阻止を目的としており、思想内容自体の発表禁止を目的とするものではないから、検閲には当たらない。また、「風俗を害すべき」とはわいせつ物を指すと解され、基準は明確である。本件郵便物は信書に当たらないため信書の秘密侵害はなく、国内の健全な性風俗の維持という公共の福祉の要請に照らせば、プライバシーや財産権の制約もやむを得ない措置として正当化される。
結論
本件税関検査および輸入規制は、憲法21条各項、13条、29条、31条に違反せず合憲である。
実務上の射程
松山税関事件判決(最判昭59・12・12)を郵便物の事案について踏襲したもの。検閲の定義を論証する際の定型句として使用できる。また、13条に基づくプライバシー権と公共の福祉との相関関係を示す際の参照判例となる。
事件番号: 平成8(行ツ)26 / 裁判年月日: 平成11年2月23日 / 結論: 棄却
米国美術館の展示作品のカタログとして刊行された写真集を輸入しようとした者に対して税関長がした右写真集が関税定率法(平成六年法律第一一八号による改正前のもの)二一条一項三号に掲げる貨物に該当する旨の通知は、右写真集が、性器そのものを強調し性器の描写に重きが置かれているとみざるを得ない写真を含んでいて、同号にいう「風俗を害…
事件番号: 昭和57(行ツ)42 / 裁判年月日: 昭和59年12月12日 / 結論: 棄却
一 憲法二一条二項前段の検閲禁止は、公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない趣旨と解すべきである。 二 憲法二一条二項にいう「検閲」とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当…
事件番号: 平成15(行ツ)157 / 裁判年月日: 平成20年2月19日 / 結論: その他
1 我が国において既に頒布され,販売されているわいせつ表現物を関税定率法(平成17年法律第22号による改正前のもの)21条1項4号による輸入規制の対象とすることは,憲法21条1項に違反しない。 2 輸入しようとした写真集が,男性性器そのものを強調し,その描写に重きを置くものとみざるを得ない写真を含むものであっても,次の…
事件番号: 昭和48(行ツ)86 / 裁判年月日: 昭和54年12月25日 / 結論: 破棄差戻
関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知又は同条五項の規定による税関長の決定及びその通知は、抗告訴訟の対象となる行政事件訴訟法三条二項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当する。