関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知又は同条五項の規定による税関長の決定及びその通知は、抗告訴訟の対象となる行政事件訴訟法三条二項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当する。
関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知又は同条五項の規定による税関長の決定及びその通知と抗告訴訟の対象
行政事件訴訟法3条2項,関税定率法21条3項,関税定率法21条5項
判旨
税関長による輸入禁制品該当通知は、それ自体は判断結果の表明(観念の通知)にすぎないが、法律に基づき特定の輸入申告者に対し、当該貨物を適法に輸入する道を閉ざすという具体的・特定的な法的効果を及ぼすものであるから、行政事件訴訟法3条2項の「処分」に該当する。
問題の所在(論点)
関税定率法21条3項の通知、および同条5項の異議申出に対する決定・通知が、行政事件訴訟法3条2項の「処分」に該当するか。輸入不許可処分という応答がない段階での通知等が、輸入申告者の法的地位にどのような影響を及ぼすかが問題となる。
規範
「処分」(行政事件訴訟法3条2項)とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。公権力主体の行為であっても、それが単なる判断結果の表明(観念の通知)にとどまらず、法律の規定に準拠して行われ、かつ、その行為によって、特定の者に対し直接に義務を課し、またはその権利利益を制限する等の法的効果を及ぼすものと認められる場合には、処分性が肯定される。
重要事実
上告人は、書籍『サン・ワームド・ヌード』を輸入申告したが、税関長から関税定率法21条3項に基づき、当該書籍が「公安又は風俗を害すべき物品(輸入禁制品)」に該当する旨の通知を受けた。上告人は異議の申出をしたが、税関長はこれを棄却する決定(同条5項)をし、上告人に通知した。上告人は、これら通知・決定等の取消しを求めて提訴したが、原審はこれらが「観念の通知」にすぎないとして、処分性を否定し訴えを却下した。
事件番号: 昭和57(行ツ)42 / 裁判年月日: 昭和59年12月12日 / 結論: 棄却
一 憲法二一条二項前段の検閲禁止は、公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない趣旨と解すべきである。 二 憲法二一条二項にいう「検閲」とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当…
あてはめ
関税定率法による本件通知等は、性質上は税関長の判断結果の表明であるが、以下の理由から法的効果を有する。第一に、通知がなされた以上、税関長が判断を改めない限り輸入許可が得られる見込みはない。第二に、輸入申告者は許可なく輸入することを禁止されている(関税法111条)ため、通知によって適法に輸入する道を閉ざされる。第三に、この制約は、単なる手続遅延による一般的制約とは異なり、特定の通知によって生じた特定的・具体的な権利制限といえる。したがって、不特定多数に向けられた抽象的な制約が、通知によって輸入申告者に対する具体的な法的効果へと転化・変質したものと解される。
結論
本件通知および決定・通知は、いずれも「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当する。したがって、処分性を否定した原判決を破棄し、審理を差し戻す。
実務上の射程
本判例は、形式的には「観念の通知」とされる行為であっても、実質的に国民の権利利益(輸入の自由等)を具体的に制限し、それ以外の救済手段(輸入不許可を待つ等)を期待できない場合には、例外的に処分性を認める実質的判断の枠組みを示したものである。答案上は、不利益処分の前段階であっても、その行為により法的地位が確定的に損なわれる場合の「処分の先行性」を論じる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和57(行ツ)156 / 裁判年月日: 昭和59年12月12日 / 結論: 棄却
一 関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたる。 二 憲法二一条二項前段の検閲禁止は、公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない趣旨と解すべきである。 三 憲法二一条二項にいう「検閲」とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を…
事件番号: 昭和62(行ツ)117 / 裁判年月日: 平成元年4月13日 / 結論: 棄却
一 郵便物中の信書以外の物についてわいせつ表現物の流入阻止の目的で行われる税関検査は、憲法一三条に違反しない。 二 郵便物中のわいせつ表現物の輸入規制に伴うその留置の措置は、憲法二九条、三一条に違反しない。
事件番号: 平成8(行ツ)26 / 裁判年月日: 平成11年2月23日 / 結論: 棄却
米国美術館の展示作品のカタログとして刊行された写真集を輸入しようとした者に対して税関長がした右写真集が関税定率法(平成六年法律第一一八号による改正前のもの)二一条一項三号に掲げる貨物に該当する旨の通知は、右写真集が、性器そのものを強調し性器の描写に重きが置かれているとみざるを得ない写真を含んでいて、同号にいう「風俗を害…
事件番号: 昭和44(行ツ)68 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: その他
国税に関する処分に対する異議申立てを棄却した決定に対しては、異議決定固有の瑕疵を理由としてその取消訴訟を提起することができる。