一部事務組合の管理者が県当局者に対し地元の要望を伝え、両者の意思の疎通を図るため宴会による接待をした場合において、右接待が行われるに至つた経緯、右宴会に要した費用の総額が二九万円余であること、これに相当高額な芸妓花代九万円余、二次会で遊興した費用四万円余が含まれていたことなど判示の事情の下では、右接待は社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものであり、右接待に要した費用を公金により支出したことは違法である。
一部事務組合の管理者が県当局者を接待するために行つた宴会等の費用を公金により支出したことが違法とされた事例
地方自治法2条2項,地方自治法232条1項,地方自治法242条の2第1項,地方自治法284条
判旨
普通地方公共団体の長らによる接遇は、社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り許容されるが、その範囲を逸脱する場合には公金支出の対象とはならず、支出命令は違法となる。
問題の所在(論点)
普通地方公共団体の長(または一部事務組合の管理者)が、対外的折衝に伴う接遇費用を公金から支出することの可否、およびその適法性の判断基準が問題となる。
規範
普通地方公共団体が事務遂行や対外的折衝の過程で行う接遇は、社会通念上儀礼の範囲にとどまる程度のものである限り、当該事務に随伴するものとして許容される。しかし、公的存在であることに鑑み、社会通念上儀礼の範囲を逸脱する接遇に要した費用を公金により支出することは許されない。この理は、地方自治法284条1項の一部事務組合の管理者による接遇においても同様に妥当する。
重要事実
一部事務組合の管理者である町長(上告人)が、治水事業等に関する要望を伝え意思疎通を図る目的で、岐阜県当局者ら6名を料亭で接待した。出席者は合計13名で、費用の総額は約29万円であった。この費用には、料理飲食代のほか、芸妓4名に対する花代(約9万5千円)や、二次会のバーでの遊興費(約4万2千円)が含まれていた。上告人はこの費用を組合の公金から支払うよう支出命令を発した。
事件番号: 昭和61(行ツ)91 / 裁判年月日: 平成元年10月3日 / 結論: 棄却
一部事務組合であるD事務組合の管理者が組合幹部六名とともに建設省の係官四名に対しその間の連絡を密にする必要から宴会による接待をした場合において、それが右係官らによるD区域内の堤防等の巡視に引き続き地元の料亭で、その労をねぎらいながら酒食を共にしたものであって、費用の総額が二〇万円余であるなど判示の事情の下では、右接待は…
あてはめ
本件宴会は意思疎通を目的としていたが、経緯や費用総額に照らし、相当高額な芸妓花代が含まれていることや、二次会の遊興費まで負担している点は、社交儀礼の範囲にとどまる態様・内容とはいい難い。客観的にみて、接待それ自体を主たる目的とするものとみられてもやむをえない。したがって、本件接遇は社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものであり、公金支出が許容される範囲を超えているといえる。
結論
本件宴会費用を組合の公金から支出することは許されず、管理者である上告人が発した本件支出命令は違法である。
実務上の射程
地方自治法に基づく住民訴訟(公金支出の違法確認・不当利得返還請求等)において、官官接待や交際費支出の違法性を判断するリーディングケースである。判断にあたっては、目的、経緯、金額、項目(酒食・芸妓・二次会等)などの諸要素を総合考慮して「社会通念上の儀礼の範囲」を画定する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和62(行ツ)108 / 裁判年月日: 昭和63年11月25日 / 結論: 棄却
市が県当局者に対し二回にわたり一人当たり一回約一万四〇〇〇円ないし約一万八〇〇〇円の酒食の接待をした場合において、右接待が市民プール建設等の事業計画についての意見調整等をする必要上行われたものであるなど原判示の事実関係(原判決引用の第一審判決参照)の下では、右接待は社会通念上相当な範囲にとどまるものであつて、その費用を…