鉄道営業法一一条ノ二第二項及び鉄道運輸規程七三条二号は、商法五七八条の特則である。
鉄道営業法一一条ノ二第二項及び鉄道運輸規程七三条二号と商法五七八条との関係
鉄道営業法11条ノ2第2項,鉄道運輸規程73条2号,商法578条
判旨
鉄道営業法11条の2第2項及び鉄道運輸規程73条2号は商法578条の特則であり、高価品の明告があっても、要償額の表示および表示料の支払いがなければ、運送人は規定の制限額を超えて賠償責任を負わない。
問題の所在(論点)
荷送人が商法上の高価品の明告を行っている場合において、鉄道営業法所定の「要償額の表示」及び「表示料の支払い」がないことを理由として、運送人が賠償責任の制限(免責)を主張できるか。鉄道営業法等の規定が商法578条の特則として優先適用されるか、及びその主張が信義則に反しないかが問題となる。
規範
鉄道営業法11条の2第2項及び鉄道運輸規程73条2号(現:鉄道営業法11条の3等に対応)は、商法578条(高価品の責任)の特則である。したがって、荷送人が高価品の運送委託時に種類・価額を明告した場合であっても、別途「要償額の表示」および「表示料の支払い」という手続を履践していない限り、運送人は鉄道運輸規程が定める制限額を超えて損害賠償責任を負わない。
重要事実
荷送人(上告人)は、鉄道運送人(被上告人)に対し高価品の運送を委託した。その際、荷送人は運送人に対し、当該物品の種類及び価額を明告していた。しかし、鉄道営業法及び同運輸規程が定める「要償額の表示」を行い、かつ、これに対応する「表示料の支払い」を完了してはいなかった。その後、運送過程で損害が生じたため、荷送人が損害全額の賠償を求めたところ、運送人が法規に基づく責任制限を主張した。
あてはめ
本件における鉄道営業法及び鉄道運輸規程の規定は、鉄道運送の公共性や大量性に鑑み、商法578条の特則として機能するものと解される。事実関係によれば、荷送人は種類・価額の明告は行っているものの、鉄道運送特有の要件である要償額の表示と表示料の支払いを欠いている。この場合、特則の適用により運送人の賠償責任は定型的な制限額に限定される。また、このような法規定に基づく責任制限の主張は、運送人に信義則違反となるような特段の事情(悪意や重大な過失等を示唆する具体的な事実は判決文からは不明)がない限り、正当な権利行使として容認される。
結論
運送人は、鉄道運輸規程所定の金額を超えて損害賠償責任を負わない。責任制限の主張は信義則に反せず、正当である。
実務上の射程
商法上の高価品の特則として鉄道営業法等の特別法が優先することを認めた事例。実務上、鉄道運送における責任制限を争う際は、単なる明告だけでなく、業法上の形式的要件(表示料支払等)の有無を厳格に確認する必要がある。また、責任制限の主張が信義則違反となるハードルは極めて高いことを示唆している。
事件番号: 昭和50(オ)1190 / 裁判年月日: 昭和51年11月25日 / 結論: 棄却
港湾運送契約の締結に際し、荷送人が、貨物を海上保険に付したうえ、運送人との間で港湾運送約款に基づき「運送人は、保険に付された危険によつて生じた貨物の滅失等については、損害賠償の責めに任じない。」旨の合意をした場合でも、特段の事情のない限り、被保険者である荷送人は、保険金額の範囲内の損害につき、貨物滅失に基づく運送人に対…