一、運送取扱人ないし運送人の運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権は競合し、右不法行為責任は、運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する場合にだけ限定されるものではない。 二、国際海上物品運送法一四条は運送人または荷役業者に対する不法行為に基づく損害賠償請求については適用されない。
一、運送取扱人ないし運送人の運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権との関係 二、国際海上物品運送法一四条と運送人または荷役業者に対する不法行為に基づく損害賠償責任
民法709条,民法415条,商法766条,商法566条,国際海上物品運送法14条,国際海上物品運送法3条
判旨
運送人の不法行為責任は契約上の債務不履行責任と競合し、運送契約の当事者でない荷役業者の不法行為責任は、運送人の債務不履行責任の有無に左右されない。また、国際海上物品運送法14条の責任制限規定は、運送人または荷役業者に対する不法行為に基づく損害賠償請求には適用されない。
問題の所在(論点)
荷役業者の不法行為責任において、①運送人の債務不履行責任の有無や範囲が影響を及ぼすか、②国際海上物品運送法14条の責任制限規定の適用があるか。
規範
1. 運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権は競合する。不法行為責任の成立は、契約の目的範囲を著しく逸脱する場合に限定されない。 2. 荷役業者は運送契約の当事者ではなく、委託者に対し直接の契約上の義務を負わないため、その不法行為責任は運送人の債務不履行義務の成否に影響されない。 3. 国際海上物品運送法14条(責任制限)は、運送人の債務不履行責任に関する規定であり、不法行為に基づく請求には適用されない。
重要事実
運送委託者(被上告人)が、荷揚げ作業中に荷物(合成樹脂)を損傷させた荷役業者(上告人)に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した。荷役業者は、自らの責任は運送人の債務不履行責任の範囲に限定されるべきであること、および国際海上物品運送法14条のパッケージ・リミテーション(責任制限)が適用されるべきであることを主張して争った。
あてはめ
上告人は荷役業者であって運送契約の当事者ではない。したがって、被上告人との間に契約関係は存在せず、上告人が負う不法行為責任は独自の注意義務違反(過失)に基づき成立するものである。また、国際海上物品運送法14条は、その文言および趣旨から運送契約上の債務不履行責任を対象とするものであり、不法行為という別個の請求権を制限する法的根拠はない。カーゴボートノートの免責性や商慣習法の存在も認められないため、民法上の不法行為責任を制限する事情はない。
結論
荷役業者の不法行為責任は、運送人の契約上の責任とは独立して成立し、国際海上物品運送法による責任制限も受けない。
実務上の射程
請求権競合論を確認するとともに、責任制限条項の効力が不法行為に及ばないとする「ヒマラヤ条項」がない場合の原則論を示す。現行の国際海上物品運送法では改正により不法行為への適用範囲が広がっている(20条の2)が、判例の基本的な法理として、契約責任と不法行為責任の峻別を論じる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)528 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
運送取扱人ないし運送人が、予め発送人に対し通知もせず、その指図も受けないで、運送品を、荷受人でない第三者に引渡した場合は、単に原審認定のような事情(原判決参照)があるだけでは、未だこれを無過失ということはできない。