一筆の土地が現地においてA部分とB部分とに明確に区分され、A部分は甲に、B部分は乙にそれぞれ賃貸されたのちにおいて、甲が売買の目的物を右一筆の土地と表示して契約を締結したとしても、B部分を含める旨の明示的な合意がされている等特段の事情のない限り、右一筆の土地全部が売買の対象とされたものと認めることは、経験則に反する。
一筆の土地全部が売買されたとの認定が経験則に反するとされた事例
民法第1編第4章第1節,民法555条,民訴法394条
判旨
一筆の土地の一部が現地で明確に区分されて別々に利用されている場合、土地全体を表示して売買契約を締結しても、特段の事情がない限り、買主が占有・利用していた区分部分のみが売買の目的物となる。
問題の所在(論点)
売買契約において、契約書上の表示が一筆の土地全体を指している場合であっても、現地で区分された一部のみを目的物とする合意があったと解することができるか。土地売買における目的物の確定(意思表示の解釈)が問題となる。
規範
一筆の土地の一部(甲部分)が他の部分(乙部分)から現地において明確に区分され、それぞれが別個の者に賃貸されていた場合、賃借人の一人が「当該一筆の土地」と表示して売買契約を締結したとしても、取引通念上、甲部分のみを売買の目的としたものと解するのが相当である。乙部分をも含むとするには、その旨の明示的な合意等の「特段の事情」を要する。
重要事実
被上告人は、一筆の土地(分筆前のc番d)を借地として工場敷地に使用していたが、昭和37年に同土地を買い受けた。当該土地と隣接地(本件係争地)との間には、昭和初期から板塀や生垣、有刺鉄線が設けられ、現地では明確に境界区分がなされていた。被上告人は以前からこの区分された範囲のみを占有使用し、本件係争地は上告人の先代が借地として占有使用していた。原審は、実測面積と公簿面積の差や公図上の境界線を根拠に、公的な境界に従い被上告人が本件係争地を含む土地を買い受けたと認めた。
あてはめ
本件では、被上告人が買い受けた土地と本件係争地との間には、長期にわたり板塀や生垣、有刺鉄線により物理的な境界が設けられ、使用範囲が明確に区分されていた。被上告人は従前からこの区分された範囲のみを借地として使用し、買い受け後も同様であった。このような客観的状況下では、単に契約書で地番全体を表示したからといって、上告人が占有使用していた別区画まで含むとする明示的合意がない限り、被上告人が本件係争地をも買い受けたと認めることは経験則に反する。原審が指摘する面積の過不足等は、上記「特段の事情」を基礎付けるに足りない。
結論
本件係争地を含む土地を買い受けたと認めることはできず、特段の事情の存否について審理を尽くさせるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
土地売買における目的物の範囲を確定する際の判断枠組みを示す。登記や公図上の地番による表示があっても、現地の占有・利用状況から目的物が限定される場合があることを明示したものであり、特に一部譲渡の成否が争点となる事案で、「特段の事情」の有無を検討する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)600 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分における目的物の表示に誤記がある場合であっても、それが明白な誤記であって、処分の目的物が客観的に特定可能であれば、当該処分の効力は妨げられない。 第1 事案の概要:被上告人は、農地調整法に基づく買収および売渡処分を通じて本件農地の所有権を取得したと主張した。しかし、当該処分に係る買収計画書…
事件番号: 昭和33(オ)792 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証人の証言の一部を採用し、他の部分を措信しないという自由な評価を行うことが認められる。また、当事者の主張と供述が一貫している場合には、それに基づき事実を認定することが可能である。 第1 事案の概要:被上告人は、係争地を含む山林を買い受けたと主張していた。第一審および第二審において、証人D…
事件番号: 昭和40(オ)654 / 裁判年月日: 昭和41年10月21日 / 結論: 棄却
地盤上に植栽された立木の所有権を取得した者は、明認方法等の対抗要件を備えないかぎり、右地盤(土地)を地上の右立木とともに買いうけ右土地についてその所有権移転登記を経由した第三者に対し、前記立木所有権取得を対抗することができない。