順位を異にする複数の抵当権が設定されている不動産について後順位の抵当権の実行がされた場合において、最先順位の抵当権設定後右後順位抵当権設定前に右不動産を賃借した者は、最先順位の抵当権設定当時存在していた賃借権が競売手続中に消滅したときであつても、右賃借権をもつて右不動産の競落人に対抗することができない。
順位を異にする複数の抵当権が設定されている不動産について後順位の抵当権が実行された場合と最先順位の抵当権設定後右後順位の抵当権設定前に成立した不動産賃借権の対抗力
民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)649条,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)700条,競売法32条
判旨
不動産に順位を異にする複数の抵当権が設定され、その中間に賃借権が設定された場合、後順位抵当権の実行による競落によって、最先順位抵当権に対抗できない中間の賃借権は消滅する。
問題の所在(論点)
後順位抵当権の実行により、最先順位抵当権と実行された後順位抵当権との間に設定された賃借権が消滅するか。また、最先順位抵当権設定前に存在した賃借権が消滅し、設定後に新たに契約し直された場合に結論に影響があるか。
規範
不動産競売において、後順位抵当権が実行された場合であっても、競落によって先順位抵当権を含む全ての抵当権が消滅する以上(消滅主義)、最先順位抵当権に対抗できない中間の用益権もこれに伴い消滅する。この理は、最先順位抵当権設定当時に存在した旧賃借権が消滅し、その後新たに賃貸借契約が締結された場合においても同様に妥当する。
重要事実
対象不動産には、順位を異にする複数の抵当権が設定されていた。第一順位の抵当権設定後、第二順位の抵当権が設定されるまでの間に、対象物件について賃借権(または新たな賃貸借契約に基づく権利)が設定された。その後、後順位である第二順位の抵当権が実行され、被上告人が不動産を競落した。上告人は、自らの賃借権を競落人である被上告人に対抗できると主張した。
あてはめ
本件では、実行されたのは後順位抵当権であるが、競落の結果、最先順位の抵当権も弁済によりすべて消滅する。賃借権が最先順位抵当権の後に設定されたものである以上、当該賃借権は最先順位抵当権に対抗できない。したがって、消滅主義の原則に基づき、最先順位抵当権とともに中間の賃借権も消滅すると解される。また、上告人の賃借権が最先順位抵当権設定当時の旧賃借権を承継したものではなく、設定後に新たに締結されたものであるならば、やはり対抗力は認められない。
結論
後順位抵当権の実行による競落により、上告人の賃借権は消滅するため、競落人である被上告人に対抗することはできない。
実務上の射程
抵当権と用益権の優劣関係(民法395条等)に関する基本的判例である。後順位抵当権の実行であっても、基準となるのは「最先順位抵当権」であるという消滅主義(掃下条項)の論理を端的に示す。答案上は、競落人による明渡請求の可否を論じる際、賃借権の消滅を根拠づける規範として使用する。
事件番号: 昭和52(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和53年6月29日 / 結論: 破棄差戻
賃貸中の不動産に対する競売開始決定の差押の効力発生後賃貸人のした賃借権譲渡の承諾は、特段の事情のない限り、右差押の効力によつて禁止される処分行為にあたらず、譲受人は、賃借権の取得をもつて競落人に対抗することができる。