互いに主従の関係にない甲乙二棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により一棟の丙建物となった場合、甲建物又は乙建物を目的として設定されていた抵当権は、丙建物のうち甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。
互いに主従の関係にない甲乙二棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により一棟の丙建物となった場合と甲建物又は乙建物を目的として設定されていた抵当権の消長
民法244条,民法247条2項,民法369条
判旨
主従関係にない二棟の建物が合体して一棟の建物となった場合、旧建物に設定されていた抵当権は消滅せず、各建物の価格の割合に応じた新建物の共有持分の上に存続する。
問題の所在(論点)
建物の合体(添付)により旧建物が独立性を失った場合、旧建物に設定されていた抵当権の効力はどうなるか。また、合体後に賃借権を取得した者は、旧建物に設定されていた抵当権の優先性を否定できるか。
規範
互いに主従の関係にない建物が合体して一棟の建物となった場合、旧建物を目的として設定されていた抵当権は消滅しない。この場合、抵当権は合体後の建物(新建物)のうち、旧建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。これは、抵当権の本質が不動産の価値を把握する点にあり、旧建物の価値が新建物の一部として存続している以上、その価値に対応する持分上に効力が及ぶべきだからである。
重要事実
1. 甲建物および乙建物は互いに主従の関係にない別個の独立した建物であった。 2. 両建物の間の隔壁を除去する等の工事が行われ、一棟の丙建物となった。 3. 合体前、甲建物または乙建物にはそれぞれ抵当権が設定され、その登記もなされていた。 4. 建物の合体後、上告人Aは所有者から丙建物を貸借し、引渡しを受けた。 5. 抵当権者が抵当権の実行等を試みた際、賃借人であるAが自らの賃借権の優先性を主張して争った。
あてはめ
本件では、甲・乙建物が合体して丙建物となったが、甲・乙それぞれの価値は丙建物の価値の一部として客観的に存続しているといえる。したがって、各抵当権は丙建物の価格比率に応じた共有持分の上に存続することになる。上告人Aは、この合体工事の後に丙建物を貸借して引渡しを受けている。旧建物に設定された抵当権およびその登記は、合体後の持分に対しても対抗力を維持しているため、後位の賃借人であるAが抵当権者に対し、自らの賃借権が優先する旨を主張することは信義則上許されないと解される。
結論
旧建物に設定された抵当権は、合体後の建物の共有持分の上に存続する。合体後の賃借人は、当該抵当権者に対して自らの権利の優先を主張できない。
実務上の射程
建物の合体(民法243条、247条)における抵当権の帰趨に関するリーディングケースである。答案上は、登記の流用や抵当権の効力範囲の問題として論じる。主従関係がある場合の附合(民法242条)と異なり、対等な合体では持分の上に存続するという結論を導く際に使用する。
事件番号: 昭和62(オ)524 / 裁判年月日: 平成2年4月19日 / 結論: 棄却
ガソリンスタンドの店舗用建物に対する抵当権設定当時、建物内の設備と一部管によつて連通する地下タンク、ノンスペース型計量機、洗車機などの諸設備を右建物の敷地上又は地下に近接して設置し、これらを右建物に付属させて経済的に一体として右営業に使用していたなど判示の事情の下においては、右諸設備には、右建物の従物として抵当権の効力…