県職員に対する時間外勤務手当の支給が法令等に基づかない手続によつてされている事実を指摘するにとどめ、右支給につき採るべき措置の選択を知事にゆだねる趣旨の勧告も、地方自治法二四二条三項にいう勧告に当たるから、右勧告に関し知事の講じた措置についての通知を受けた日から三〇日以内に提起された右手当支給に関する同法二四二条の二第一項四号の訴えは、出訴期間を遵守したものである。
地方自治法二四二条の二第一項四号の住民訴訟が出訴期間を遵守したものと認められた事例
地方自治法242条3項,地方自治法242条の2第2項
判旨
地方自治法242条3項に基づく監査委員の勧告は、違法な事実の指摘に留まり具体的措置の選択を長に委ねる形式であっても同項の勧告に該当し、これに対する通知の日から住民訴訟の出訴期間が起算される。
問題の所在(論点)
地方自治法242条3項に基づく監査委員の勧告において、具体的な措置の内容を特定せず、その選択を長に委ねる形式の勧告が、同条項にいう「勧告」に該当するか。また、これにより住民訴訟(同法242条の2第2項)の出訴期間が維持されるか。
規範
地方自治法242条3項にいう監査委員の「勧告」とは、監査の結果に基づき必要な措置を講ずべきことを求めるものである。当該勧告が、対象となる行為が法令等に基づかない不適切なものであるという事実を指摘するに留まり、具体的な是正措置の選択を当該普通地方公共団体の長の判断に委ねる内容であっても、同条項の勧告としての性質を失うものではない。
重要事実
福岡県監査委員は、県知事に対し、東福岡財務事務所間税課職員への時間外勤務手当の支給が法令等に基づかない不適切な手続で行われている事実を指摘する勧告を行った。この勧告は、具体的な是正措置(手当の返還請求等)を明示せず、措置の選択を知事に委ねる形式であった。原告(被上告人)は、知事が講じた措置についての通知を受けた日から30日以内に住民訴訟を提起したが、被告(上告人)側は、本件勧告は具体的措置を求めていないため同条3項の勧告に当たらず、出訴期間の起算点に影響しない(不適法な訴えである)と主張した。
あてはめ
本件勧告は、昭和54年10月分の時間外勤務手当の支給が法令等に基づかない手続で行われているという違法・不当な事実を明確に指摘している。具体的な措置の選択を知事に委ねているものの、これは監査委員の裁量権の範囲内での判断であり、監査の結果に基づいて是正を促すという勧告の本旨に沿うものである。したがって、本件勧告は法242条3項所定の勧告に当たるといえる。そうであれば、知事から当該勧告に関する措置の通知を受けた日から30日以内に提起された本件訴えは、法242条の2第2項の出訴期間を遵守したものと解される。
結論
具体的措置の選択を長に委ねる形式の勧告も地方自治法242条3項の勧告に含まれる。したがって、当該勧告に基づく通知から30日以内に提起された本件住民訴訟は適法である。
実務上の射程
監査委員の勧告の内容に一定の弾力性を認めた判例であり、住民訴訟の前置手続としての監査請求の有効範囲を広く認める機能を持つ。答案上は、勧告が抽象的であるとして出訴期間の徒過が争われる場面で、本判決を根拠に「勧告」の該当性を肯定し、適法性を基礎づける際に活用できる。
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