一 監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、当該請求をした住民は、直ちに住民訴訟を提起することができるのみならず、同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象として再度の住民監査請求をすることも許される。 二 監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、住民訴訟の出訴期間は、地方自治法二四二条の二第二項一号に準じ、却下の通知があった日から三〇日以内と解するのが相当である。
一 適法な住民監査請求が不適法であるとして却下された場合における同一の監査対象についての再度の住民監査請求の許否 二 適法な住民監査請求が不適法であるとして却下された場合における住民訴訟の出訴期間
地方自治法242条1項,地方自治法242条3項,地方自治法242条の2第1項,地方自治法242条の2第2項
判旨
適法な住民監査請求が不当に却下された場合、住民は直ちに住民訴訟を提起できるだけでなく、同一事項について再度の監査請求をすることも許される。この場合、住民訴訟の出訴期間は、再度の監査請求に対する却下通知を受けた日から起算すべきである。
問題の所在(論点)
適法な住民監査請求が不適法として却下された場合において、住民が同一事項について再度の住民監査請求を行うことの可否、およびその場合の住民訴訟の出訴期間の起算点(地方自治法242条の2第2項各号の適用関係)。
規範
1. 監査委員が適法な住民監査請求を不適法として却下した場合、住民は直ちに住民訴訟を提起できるほか、同一の財務会計上の行為等を対象として再度の住民監査請求をすることも許される。住民監査請求制度の目的は、自治的・内部的処理による是正機会の付与にあるからである。2. 住民監査請求が却下された場合、住民訴訟の出訴期間(地方自治法242条の2第2項1号参照)は、却下の通知があった日から30日以内と解するのが相当である。これは監査結果の通知と同様に判断結果が確定的に示されたといえるためである。3. 再度の住民監査請求がなされた場合、出訴期間は当該再度の請求に対する通知等を基準に判断すべきである。
重要事実
住民である上告人らは、市立中学校の建設支出を違法として第一回住民監査請求を行ったが、市監査委員は行政運営を対象とするもので不適法であるとして却下した。上告人らは、却下理由に応じた補正を加えた上で、同一の支出を対象に第二回住民監査請求を行ったが、監査委員は一事不再理を理由にこれも却下した。上告人らは、第二回請求の却下通知から30日以内に本件住民訴訟を提起したが、原審は、出訴期間は第一回請求を基準に計算すべき(期間徒過)として訴えを却下した。
あてはめ
本件において、第一回監査請求は請求の特定を欠くものではなく適法であった。これを監査委員が誤って却下した以上、上告人らが自治的解決の機会を重ねて与えるべく再度の住民監査請求に及ぶことは、制度の目的に適合し、かつ請求を却下された者として当然の所為といえる。したがって、第二回監査請求は一事不再理により直ちに不適法となるものではない。そうである以上、本件訴えの出訴期間は、適法な再度の請求(第二回請求)に対する却下通知を受けた日から30日以内と解すべきであり、これに従えば本件訴えは期間内に提起されたといえる。
結論
再度の住民監査請求は適法であり、それに対する却下通知から30日以内に提起された本件住民訴訟は、出訴期間を遵守したものとして適法である。
実務上の射程
監査委員の門前払い(不当な却下)に対する住民の救済を厚くする判例である。答案上は、(1)再度の監査請求の可否、(2)出訴期間の起算点の二段階で論じる。特に、監査委員の判断が示されたことをもって「監査の結果」に準じて扱う(同項1号類推)という構成は、実務上の確定的な枠組みとして重要である。
事件番号: 平成18(行ヒ)168 / 裁判年月日: 平成20年3月17日 / 結論: 破棄差戻
県警察本部の県外出張に係る旅費の支出について住民監査請求がされた場合において,当該住民が県の情報公開条例に基づき上記出張に関する資料の開示を求めたところ,当初は,上記出張の旅行期間,目的地,用務等の事項が開示されず,その部分開示決定に対する異議申立ての結果,初めてこれらの事項が開示されるに至り,その1か月後に上記監査請…
事件番号: 平成10(行ヒ)51 / 裁判年月日: 平成14年7月2日 / 結論: 破棄自判
1 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求において,監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該監査請求に地方自治法2…
事件番号: 平成17(行ヒ)341 / 裁判年月日: 平成19年4月24日 / 結論: 棄却
1 財産の管理を怠る事実に係る実体法上の請求権が除斥期間の経過により消滅するなどして怠る事実が終わった場合には,当該怠る事実の終わった日から1年を経過したときはこれを対象とする住民監査請求をすることができない。 2 財産の管理を怠る事実(第1の怠る事実)に係る実体法上の請求権が除斥期間の経過により消滅するなどして怠る事…