船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第二章(昭和五七年法律第五四号による改正前のもの)は、憲法一四条に違反しない。
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第二章(昭和五七年法律第五四号による改正前のもの)と憲法一四条
憲法14条,船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第2章(昭和57年法律第54号による改正前のもの)
判旨
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律に基づく責任制限手続に関する裁判は、当事者の実体的権利義務の存否を確定するものではないため、憲法32条及び82条1項にいう裁判には該当しない。
問題の所在(論点)
船主責任制限法12条所定の責任制限手続に関する裁判が、憲法32条及び82条1項に規定される「裁判」に該当し、対審・公開等の原則が適用されるべきか、すなわち純然たる訴訟事件といえるかが問題となった。
規範
憲法32条及び82条1項が規定する「裁判」とは、裁判所が当事者の意向にかかわらず終局的に事実を確定し、当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする、純然たる訴訟事件についての裁判のみを指す。したがって、非訟事件のように実体的な権利関係の存否を確定するものではない手続は、これら憲法上の裁判概念には当たらない。
重要事実
船舶所有者等の責任の制限に関する法律(船主責任制限法)に基づく責任制限手続について、債権者がその合憲性や手続の適法性を争い、特別抗告を申し立てた事案である。抗告人は、同法が財産権(憲法29条)や法の下の平等(憲法14条)に反するとともに、責任制限手続が憲法32条(裁判を受ける権利)や82条1項(裁判の公開)に反する裁判であると主張した。
事件番号: 昭和53(ク)77 / 裁判年月日: 昭和55年11月5日 / 結論: 棄却
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第二章の規定は、憲法二九条一項、二項に違反しない。
あてはめ
船主責任制限法に基づく責任制限手続は、債務者の責任を一定の範囲に限定し、債権を整理・清算することを目的とする手続であり、債権者と債務者の間で争われる具体的な実体的権利義務の存否そのものを終局的に確定することを目的とするものではない。したがって、本手続は「純然たる訴訟事件」としての性質を欠いており、憲法が保障する厳格な裁判手続を要する対象ではないと解される。
結論
責任制限手続に関する裁判は、憲法32条及び82条1項にいう裁判には該当しない。また、同法は憲法14条及び29条にも違反しない。
実務上の射程
憲法上の「裁判」概念を「純然たる訴訟事件」に限定する判例法理を確認したものである。答案上は、非訟事件や民事執行・倒産手続の合憲性を論じる際、対審・公開の原則が及ばない論理的根拠として引用できる。また、船主責任制限制度という特殊な制度の合憲性についても、公共の福祉による財産権制限として肯定される。
事件番号: 昭和41(ク)402 / 裁判年月日: 昭和45年6月24日 / 結論: 棄却
破産宣告決定およびこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定は、口頭弁論を経ないでなされても、憲法八二条に違反しない。
事件番号: 昭和37(ク)243 / 裁判年月日: 昭和40年6月30日 / 結論: 棄却
一 家事審判法第九条第一項乙類第三号の婚姻費用の分担に関する処分の審判は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。 二 婚姻費用分担義務を前提とする審判がなされた場合でも、右分担義務の存否については、別に訴を提起することを妨げない。 三 家庭裁判所は、審判時から過去に遡つて、婚姻費用の分担に関する処分をすることができる。
事件番号: 昭和59(ク)258 / 裁判年月日: 昭和60年1月22日 / 結論: 棄却
更生計画認否の裁判に対する抗告審の裁判は、公開・対審の手続によらなくても、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 平成2(ク)127 / 裁判年月日: 平成3年2月21日 / 結論: 却下
破産法三六六条ノ四第一項の破産者の審訊についての規定並びに同法三六六条ノ八の破産者及び異議申立人の意見の聴取についての規定は、憲法三二条に違反しない。