船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第二章の規定は、憲法二九条一項、二項に違反しない。
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第二章の規定の合憲性
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第2章船舶の所有者等の責任の制限,憲法29条1項,憲法29条2項
判旨
船舶所有者等の責任の制限に関する法律による責任制限規定は、海運業の危険性、国際的調和、及び制度的配慮に鑑み、公共の福祉に適合する合理的な制約として憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
船主責任制限法第2章の規定による、債権者の損害賠償請求権の制限は、憲法29条1項および2項が保障する財産権の侵害として違憲とならないか。
規範
財産権に対する制約(憲法29条2項)が許容されるかは、その制約が「公共の福祉」に適合するか否かによって判断される。具体的には、当該産業の特性、国際的状況、制度導入の必要性、および制限の範囲や代替的な権利保護の有無を総合的に考慮し、その制限が合理的かつ必要といえるかにより決する。
重要事実
船舶所有者等の責任の制限に関する法律(船主責任制限法)第2章の規定は、航海に関して生じた一定の債権について、船舶所有者の責任を積量トン数に応じた一定額に制限している。抗告人は、この責任制限規定が債権者の有する損害賠償請求権(財産権)を不当に侵害するものであり、憲法29条に違反すると主張して争った。
事件番号: 昭和57(ク)180 / 裁判年月日: 昭和58年6月30日 / 結論: 棄却
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第二章(昭和五七年法律第五四号による改正前のもの)は、憲法一四条に違反しない。
あてはめ
まず、海運業は多額の資本投下と大きな危険を伴うため、その適正な運営と発展のために責任制限制度の必要性が認められる。次に、本規定は国際条約に即したものであり、海運業の国際的性格からわが国のみが制度を採用しないことは困難である。さらに、制度の内容面においても、船舶所有者自身の故意・重過失による損害や特定の債権は制限対象外とされており、一方で商法上の無過失責任化など責任の加重も図られている。これらの諸点を勘案すれば、本規定は海運業の保護と債権者保護の調整を図った合理的な制度であるといえる。
結論
船主責任制限法第2章の規定は、公共の福祉に適合する定めとして是認でき、憲法29条1項、2項に違反しない。
実務上の射程
財産権の制限に関する「合理的関連性」や「必要性」を検討する際のリーディングケースである。特に、政策的目的(産業保護)と国際的整合性が合憲性判断の重要な要素となる局面で援用すべき判例である。行政法や商法の答案において、私法の責任原則(全額賠償原則)の例外を正当化する憲法上の根拠としても機能する。
事件番号: 昭和55(ク)101 / 裁判年月日: 昭和55年6月19日 / 結論: 却下
現行競売法(これに準用される民訴法の規定を含む。)の規定のもとにおいて、利害関係人に対し競売期日を通知するものとするかどうかは、もつぱら立法政策の問題であつて、憲法適否の問題ではない。
事件番号: 昭和36(ク)101 / 裁判年月日: 昭和36年12月13日 / 結論: 棄却
破産法の免責規定は憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和40(ク)464 / 裁判年月日: 昭和45年12月16日 / 結論: 棄却
一、会社更生法(昭和四二年法律第八八号による改正前のもの)一一二条、二四一条、会社更生法二一三条、二四二条は、憲法二九条一項、二項に違反しない。 二、会社更生法(昭和四二年法律第八八号による改正前のもの)一二五条、一四七条、二三七条、二四一条、会社更生法二一三条、二四二条、二四三条は、憲法二九条二項、三二条に違反しない…
事件番号: 昭和28(ク)79 / 裁判年月日: 昭和29年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は国に対し健康で文化的な最低限度の生活を営ませる義務を課すにとどまり、個々の国民に具体的・現実的な権利を付与するものではない。また、憲法21条の表現の自由は、私法関係等に基づく義務により制限を受け得る。 第1 事案の概要:会社側の整理基準に基づき、欠勤・遅参・早退が多い者(基準6該当…