破産宣告決定およびこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定は、口頭弁論を経ないでなされても、憲法八二条に違反しない。
破産宣告決定およびこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定と憲法八二条
破産法126条,破産法110条,破産法112条,憲法82条
判旨
破産宣告決定およびその抗告棄却決定は、当事者間の実体的権利義務を終局的に確定する「純然たる訴訟事件」ではないため、憲法82条の対審・判決の公開原則は適用されない。
問題の所在(論点)
破産宣告決定およびその抗告棄却決定は、憲法82条の「裁判」に含まれ、公開の法廷における対審および判決を要するか。破産手続の法的性質と、憲法上の裁判の公開原則の適用範囲が問題となる。
規範
憲法82条が公開の法廷での対審・判決を要求する「裁判」とは、裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し、実体的権利義務の存否を確定することを目的とする「純然たる訴訟事件」についての裁判のみを指す。非訟事件や破産手続のように、実体的権利義務の存否を終局的に確定しない手続には同条は適用されない。
重要事実
抗告人に対し、東京地裁が口頭弁論(公開の法廷における対審)を経ずに破産宣告決定を行い、東京高裁も同様の手続で即時抗告を棄却した。抗告人は、これらの決定が公開の法廷における対審・判決を経ないでなされたことは憲法82条等に違反すると主張し、特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和33(ク)262 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許された場合に限られ、民事事件においては民事訴訟法(旧法)419条の2所定の憲法違反等がある場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人は、憲法違反を理由として最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容は、実質的には単…
あてはめ
破産手続は、相対立する当事者間の実体的権利義務の存否の確定を目的とするものではなく、経済的に破綻した債務者の財産を総債権者に公平に配分することを目的とする。破産宣告決定は手続の開始を宣告するにすぎず、債権債務の存否を終局的に確定するものではない。債権の存否を争う場合は別途「債権確定訴訟」等の純然たる訴訟事件を経ることになる。債務者の財産管理権喪失や資格制限等の不利益は、破産手続の目的達成のための付随的効果にすぎず、実体的権利義務の存否に影響を及ぼすものではないため、純然たる訴訟事件とはいえない。
結論
破産宣告決定および抗告棄却決定は、固有の司法権の作用に属する裁判(純然たる訴訟事件)に該当しないため、口頭弁論を経ずになされたとしても憲法82条に違反しない。
実務上の射程
「純然たる訴訟事件」と「非訟事件(またはそれに類する手続)」の区別基準を示すリーディングケースである。答案上は、憲法82条の適用範囲を論ずる際、対審・判決の公開が要求されるのは『終局的に実体的権利義務を確定する手続』に限られるという規範を導く際に使用する。
事件番号: 昭和25(ク)142 / 裁判年月日: 昭和25年12月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては憲法違反の判断を不当とする特別抗告のみがこれに該当する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、その抗告理由は、原決定において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合する…
事件番号: 昭和28(ク)258 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、特別抗告(旧民訴法419条の2、現行336条)の場合に限られ、抗告理由は憲法違反の判断の不当性に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。本件の抗告理由は、原決定における憲法適合性の判断を不当とするもの(旧…
事件番号: 昭和34(ク)172 / 裁判年月日: 昭和34年6月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特別に許容された場合に限られ、民事事件においては旧民事訴訟法419条の2(現行336条相当)所定の特別抗告のみが認められる。適法な違憲の主張を具体的に示さず、単なる事実誤認や手続違背を主張する抗告は、特別抗告の要件を欠き不適法である。 第1 事案…
事件番号: 昭和26(ク)200 / 裁判年月日: 昭和26年12月3日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては憲法違反を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が、下級審の決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた事案。抗告人は、原決定に法律等の憲法適合性に関する判断の不…