乙に対して損害賠償債権を有する甲が乙丙間の売買を詐害行為であるとして丙に対しその取消を求めて提起した訴訟の控訴審において、併合提起されていた甲の乙に対する損害賠償請求につき第一審の勝訴判決が確定しているため、立証の対象が専ら右売買の詐害行為性の有無に限られ、甲が損害賠償債権の存在については事実上立証の必要がないものと誤解してその立証をしなかつたなど判示のような事情があるときには、裁判所が右損害賠償債権の立証がないとして甲敗訴の判決をすることは、その立証を促すべき釈明権の行使を怠つた違法があるものというべきである。
立証についての釈明権の不行使が違法とされた事例
民法424条,民訴法127条
判旨
詐害行為取消請求において、被保全債権の存否が争点とならず詐害性の立証のみが重ねられていた場合、裁判所が突如債権の不存在を理由に敗訴判決を下すことは不意打ちとなる。このような場合、裁判所は釈明権を行使して立証を促すべきであり、これを怠ることは審理不尽の違法にあたる。
問題の所在(論点)
詐害行為取消請求において、被保全債権の存否について一審で勝訴判決を得ていた原告が、二審でその立証を事実上不要と誤解していた場合、裁判所は釈明権を行使して立証を促すべきか(民事訴訟法における釈明義務の範囲)。
規範
当事者が法律的ないし事実的な点について誤解に基づき立証を怠っていることが明らかであり、かつ、その点に関する立証の成否が裁判の結果に直結する場合、裁判所は適切に釈明権を行使して立証を促すべきである。特に、主要な争点(詐害行為の存否等)に審理が集中し、前提となる要件(被保全債権の存否等)が看過されている態様においては、不意打ち防止の観点から釈明義務が認められる。
重要事実
上告人は、債務者Dに対する損害賠償請求と、被上告人(受益者)に対する詐害行為取消請求を併合提起した。一審でDに対する請求は認容・確定したが、被上告人は控訴した。二審では合計17回の口頭弁論が行われたが、審理は専ら「詐害行為の成否」に集中し、前提となる「被保全債権の存否(Dの職務執行上の悪意・重過失)」については全く触れられなかった。二審は、被保全債権の存在が立証されていないとして、直ちに上告人敗訴の判決を下した。
あてはめ
上告人はDに対する一審判決が確定していたため、被上告人との間でも債権の存在が事実上確定済みであると誤解していたと推認できる。二審の審理経過をみても、多数回の証拠調べが詐害性の点のみに限定されており、債権の存否が全く立証の対象となっていなかった。このような訴訟態様において、双方が立証を尽くした詐害性の判断をせず、不意打ち的に債権不存在を理由に敗訴させることは著しく不相当である。したがって、裁判所は釈明権を行使し、上告人に対し債権の存否についての立証を促す必要があったといえる。
結論
原審には釈明権の行使を怠り、審理を尽くさなかった違法があるため、原判決を破棄し、審理を差し戻す。
実務上の射程
訴訟において争点が一方(詐害性)に偏り、他の要件(被保全債権)が「暗黙の了解」として放置されている場合に、後者を理由に敗訴させる「不意打ち判決」を封じる論理として活用できる。特に、併合請求のうち一部が確定しているような複雑な訴訟形態における釈明義務の限界を示す事案である。
事件番号: 昭和49(オ)598 / 裁判年月日: 昭和52年3月31日 / 結論: 破棄差戻
履行不能における債務者の責に帰すべからざる事由とは、債務者に故意・過失がないか、又は債務者に債務不履行の責任を負わせることが信義則上酷に失すると認められるような事由をいう。
事件番号: 昭和37(オ)567 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: その他
ある地域を所有することを前提とし、同地域上に生立する立木の不法伐採を理由とする損害賠償の請求の当否を判断するに当り、当該地域の一部のみが請求者の所有に属するとの心証を得た以上、さらにその一部に生立する立木で伐採されたものの数量、価格等について審理すべきことは当然であり、この際右の点について、従来の証拠のほかに、さらにあ…