公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律による市街地改造事業の事業地内の土地の所有者、その土地について借地権を有する者又は権原によりその土地に建築物を所有する者で、施行者から払渡しを受けることとなる当該土地、借地権又は建築物の対償に代えて、建築施設の部分の譲受けを希望する旨の申出をしたものは、右対償の額が同法二二条の管理処分計画において定められた譲り受けるべき建築施設の部分の価額の概算額を超えない限り、右概算額の増額変更処分の取消しを求める訴えの利益を有しない。
公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律一.一二条の管理処分計画において定められた概算額の増額変更処分の取消しを求める訴えの利益
公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律22条,行政事件訴訟法9条
判旨
市街地改造事業における施設建築物の価額の概算額増額変更処分は、最終的な清算の基準となる確定額を左右するものではなく、かつ本件の事実関係下では清算前の対償の払渡しにも影響を及ぼさないため、訴えの利益を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
市街地改造法に基づく建築施設の部分の「概算額」の増額変更処分に対し、その譲受予定者が取消しを求める法律上の利益(訴えの利益)を有するか。
規範
取消訴訟を提起するには、当該処分の取消しによって回復すべき「法律上の利益」を要する(行政事件訴訟法9条1項)。処分の性質が、将来確定されるべき法的地位に対する単なる見込額の提示にとどまり、かつ当該処分によって現在の権利義務や法的地位に直接の影響を及ぼさない場合には、特段の事情がない限り、処分の取消しを求める法律上の利益は認められない。
重要事実
上告人(施行者)は市街地改造事業において、管理処分計画に基づき施設建築物の価額の概算額を定めていたが、後にこれを増額変更する「本件変更処分」を行った。被上告人らの被相続人Dは、譲受予定者として、この増額により不利な清算を強いられるとして処分の取消しと、訴訟費用の損害賠償を求めた。なお、Dが受領すべき土地等の対償額(約719万円)は、変更前後のいずれの概算額(約1756万円および約2477万円)をも下回っていた。
事件番号: 昭和55(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和59年2月16日 / 結論: 棄却
土地収用法三四条の三の規定に基づく手続開始の告示は、抗告訴訟の対象とならない。
あてはめ
第一に、法46条1項等によれば、最終的な清算は「確定額」によるものであり、「概算額」はあくまで見込額にすぎない。確定額は概算額に依存して定められるものではなく、概算額の変更自体が将来の確定額を拘束しない。第二に、概算額は清算前の対償払渡額に影響し得るが、本件では対償額が当初から概算額を下回っており、概算額の増減にかかわらず現実に対償が払い渡される事態は生じない。したがって、本件変更処分によってDが法律上の不利益を受けることはなく、回復すべき利益は存在しない。
結論
本件変更処分の取消しを求める法律上の利益は認められず、訴えは却下されるべきである。また、不適法な訴えの提起に要した弁護士費用と処分の間には相当因果関係も認められない。
実務上の射程
最終的な確定処分に先立って行われる「概算額」等の提示について、後続の確定手続から独立して法的効果が発生しない場合の訴えの利益を否定した事例である。中間的・準備的な行為に処分性を認めるか、あるいは訴えの利益を認めるかの判断において、最終的な権利義務の確定プロセスとの連動性を重視する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和55(行ツ)20 / 裁判年月日: 昭和57年7月15日 / 結論: 棄却
買収農地が売り渡されたのちに農地法四条一項五号に規定する市街化区域内にある農地となつた場合には、右農地につき小作農として売渡しを受けるべき地位にあると主張する者は、右売渡処分の取消しを求める法律上の利益を有しない。
事件番号: 昭和46(行ツ)63 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 棄却
住宅地区改良事業の事業計画の認可は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたらない。
事件番号: 昭和54(行ツ)7 / 裁判年月日: 昭和57年4月22日 / 結論: 棄却
都市計画法八条一項三号に基づく高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。
事件番号: 昭和53(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和55年11月20日 / 結論: 棄却
一 省略 二 所得税法九六条ないし一〇一条の定める資産所得合算課税制度の合憲性を争う主張は、特定の法律における具体的な税額計算の定めに関する立法政策上の適不適を争うものにすぎず、違憲の問題を生ずるものでない。