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書証を排斥した判断に審理不尽、採証法則違背、理由不備の違法があるとされた事例
民訴法185条,民訴法394条,民訴法395条1項6号
判旨
金銭の授受が消費貸借契約に基づくものか、他の合意に基づくものかが争点となる場合、合意内容を裏付ける客観的な書証が存在するならば、それを排斥するに足りる特段の事情がない限り、書証の記載通りの合意があったと認めるべきである。
問題の所在(論点)
消費貸借契約(民法587条)に基づく貸金返還請求において、金銭授受の趣旨について当事者間に争いがあり、かつ一方の主張を裏付ける客観的な書証が存在する場合の事実認定の在り方。
規範
契約の成否および内容が争点となる場合、自由心証主義(民事訴訟法247条)の下でも、当事者の供述に比して証拠価値の高い「客観的な書証」の記載内容を重視すべきである。具体的には、書証の記載が一方の当事者の主張と合致する場合、当該書証を排斥するに足りる「特段の事情」がない限り、その記載内容に即した事実認定を行わなければならない。
重要事実
会社Dの代表者である被告(上告人)が、原告(被上告人)から小切手による金員の交付を受けた際、原告は「個人への貸付(消費貸借)」であると主張し、被告は「荷為替手形の買取委託に伴う支払」であると主張した。この点に関し、被告の主張と合致する内容(買取委託や手数料の定め)が記された書面(甲39号証)が存在したが、原審は、被告の原告に対する多額の債務の存在などを理由に、同書面を形式的なものにすぎないとして排斥し、消費貸借の成立を認めた。
あてはめ
本件では甲39号証に、被告主張の「買取委託」を裏付ける具体的な記載がある。原審がこれを排斥した根拠である「多額の債務」についても、法的な発生根拠が不明なものや、別会社間の取引が含まれており、客観的な裏付けを欠く。また、取消不能信用状による決済の確実性を考慮すれば、原審の「買取が予断を許さなかった」との評価も不合理である。したがって、甲39号証の証明力を否定すべき「特段の事情」があるとはいえず、同書証を排斥して消費貸借の成立を認めた原審の判断には、採証法則違背および理由不備の違法がある。
結論
客観的証拠(甲39号証)を合理的な理由なく排斥して消費貸借契約の成立を認めた原判決には審理不尽・理由不備の違法があり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
民事訴訟における事実認定の規範として重要である。契約書の存否が争われる場面や、本件のように「金銭の授受は認めるが名目が争われる」場面において、書証の文言に反する認定を行うためのハードル(特段の事情)が極めて高いことを示す。実務上は、書証の記載を前提とした立論を基本とすべきことを示唆する。
事件番号: 昭和24(オ)114 / 裁判年月日: 昭和25年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭消費貸借契約の成否について、書面の文言が特定の事実に合致しない場合であっても、作成の経緯や当事者の主観的状況等の具体的事実に基づき、当該書面の記載内容と異なる事実を認定することは許容される。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、10万円を手渡して金銭を貸し付けた(消費貸借)。その際、被上…