いわゆる権限の委任がされた場合における委任を受けた行政庁がした処分の取消を求める訴は、委任を受けた行政庁を被告とすべきものであつて、委任をした行政庁を被告とすることは、許されない。
いわゆる権限の委任がされた場合における処分の取消の訴の被告適格
行政事件訴訟法11条
判旨
行政庁から権限の委任を受けた行政庁が、その委任に基づき自己の行為として行政処分を行った場合、当該処分の取消訴訟における被告は、委任をした行政庁ではなく、受任行政庁とすべきである。
問題の所在(論点)
行政庁間で権限の委任が行われ、受任行政庁がその権限に基づいて行政処分を行った場合、取消訴訟における被告(行政事件訴訟法11条1項参照)は委任をした行政庁と受任行政庁のいずれか。
規範
行政庁相互間において権限の委任がなされた場合、委任を受けた行政庁(受任行政庁)は、委任された権限に基づく行政処分を「自己の行為」として行うものである。したがって、当該処分の取消訴訟においては、処分を行った受任行政庁が被告適格を有する。
重要事実
京都府知事(被上告人)は、地方税法に規定される法人府民税および法人事業税の賦課徴収に関する権限を、下部組織であるD事務所長に委任していた。本件では、この委任を受けたD事務所長が差押処分を行ったため、原告は委任者である京都府知事を被告として処分の取消しを求めて提訴した。
事件番号: 平成24(行ヒ)156 / 裁判年月日: 平成25年7月12日 / 結論: 棄却
滞納者と他の者との共有に係る不動産につき滞納者の持分が国税徴収法47条1項に基づいて差し押さえられた場合における他の共有者は,その差押処分の取消訴訟の原告適格を有する。
あてはめ
本件差押処分は、京都府知事から権限の委任を受けたD事務所長が、受任した権限に基づいて自ら行ったものである。この場合、処分は受任行政庁の権限行使として外形上も法的にも帰属するため、受任行政庁である事務所長が被告となるべきである。委任をした知事を被告として訴えを提起することは、被告適格の誤りとして許されない。
結論
本件差押処分の取消しを求める訴えは、受任行政庁であるD事務所長を被告とすべきであり、委任をした京都府知事を被告とした本件訴えは不適法である。
実務上の射程
権限の「委任」と「代理」を区別する。委任の場合は受任者が自己の名で処分を行うため受任者が被告となるが、代理の場合は本人(被代理庁)の名で処分が行われるため本人が被告となる。答案上、行政組織法上の権限移転の態様を確認した上で、被告適格を判断する際の基準として用いる。
事件番号: 昭和24(オ)52 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
執行吏に係争土地の保管を命じた仮処分命令中に、仮処分債権者が右土地に立ち入り建築工事をすることにつき執行吏にこれを許可する権限を与えていないときは、仮処分債権者は、右仮処分の執行により右土地に立ち入り建築工事することは許されない。