定期預金の期限前払戻を請求した者が、預金証書と届出印鑑を所持しているほか、年末資金として預金の一部を必要とすることと残額を再び預け入れることを申し入れ、払戻請求書に預金者の住所をほぼ正確に記載したなど原判示の事実関係のもとでは、払戻しをした銀行の係員に過失がなく、払戻は債権の準占有者に対する弁済として有効である。
定期預金の期限前払戻につき民法四七八条による免責が認められた事例
民法478条,民法666条
判旨
定期預金の期限前払戻しについて、銀行の係員に過失がないと認められる場合には、債権の準占有者(民法478条)に対する弁済として有効である。
問題の所在(論点)
定期預金の「期限前払戻し」という特殊な態様での弁済において、銀行の担当係員に過失がなかったと認められる場合に、民法478条(債権の準占有者に対する弁済)の適用により弁済が有効となるか。
規範
債権の準占有者に対する弁済(民法478条)が有効となるためには、弁済者が善意かつ無過失であることを要する。銀行による預金払戻しの場合、払戻請求者が真の権利者であると信ずるにつき、銀行側の担当者に十分な注意義務の尽くされたことが必要となる。
重要事実
上告人は被上告銀行に対して定期預金債権を有していたが、何らかの事由により第三者が当該定期預金の期限前払戻しを請求した。銀行の担当係員は、当該払戻請求の手続きにおいて、提示された証書や印影の確認等の必要な確認を行った。原審では、この一連の対応において銀行側に過失はなかったと認定された。これに対し上告人は、期限前払戻しという態様等に鑑み、銀行側に過失がある旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和38(オ)1006 / 裁判年月日: 昭和41年10月4日 / 結論: 棄却
定期預金契約の締結に際し、当該預金の期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約当事者の合意により確定されているときは、右預金の期限前の払戻であつても、民法第四七八条の適用をうける。
あてはめ
本件における定期預金の期限前払戻しに関し、原審の認定した事実関係によれば、銀行の係員が払戻請求者を真の権利者と信じるにあたり過失は認められない。期限前という例外的な状況下であっても、銀行側が要求されるべき注意義務を尽くしている以上、弁済者としての無過失要件を充足すると評価される。したがって、当該払戻しは債権の準占有者に対する弁済としての効力を有するものといえる。
結論
銀行側の過失が否定される以上、定期預金の期限前払戻しは債権の準占有者に対する弁済として有効であり、上告人の預金債権は消滅する(上告棄却)。
実務上の射程
本判決は、定期預金の期限前払戻しという場面においても、民法478条(現478条の「受領権者としての外観を有する者」)の法理が妥当し、銀行の無過失が認められれば弁済が有効となることを確認したものである。
事件番号: 昭和40(オ)579 / 裁判年月日: 昭和43年3月29日 / 結論: 棄却
旧閉鎖機関保管人委員会委員長が占領軍総司令部代表官の指示を受けて、銀行預金を閉鎖機関たるD株式会社の権利であるとして、その管理処分に着手した以上、右預金は、同会社の預金としての外観をそなえるに至り、右委員長は、Dの財産管理者として、右預金の準占有者となつたものと解すべきである。