定期預金契約の締結に際し、当該預金の期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約当事者の合意により確定されているときは、右預金の期限前の払戻であつても、民法第四七八条の適用をうける。
定期預金の期限前払戻に民法第四七八条の適用があるとされた事例
民法478条,民法666条
判旨
債権者の代理人と称して債権を行使する者に対する弁済についても民法478条が適用される。また、定期預金の期限前払戻について弁済の内容が合意により確定している場合には、その払戻は同条の「弁済」に該当する。
問題の所在(論点)
1. 債権者の代理人と称して債権を行使する者は、民法478条の適用対象に含まれるか。2. 定期預金の期限前払戻は、同条の「弁済」に含まれるか。
規範
1. 債権者の代理人と称して債権を行使する者についても、民法478条(受領権者としての外観を有する者への弁済)が適用される。2. 契約時において期限前払戻の場合の利息等の弁済内容が合意により確定している場合、その期限前払戻は同条にいう「弁済」に該当する。
重要事実
上告人は、被上告銀行との間で金額50万円、期間1年の定期預金契約を締結した。その際、期限前に払い戻す場合には利息を普通預金と同率の日歩7厘とする合意(商慣習による意思)があった。その後、上告人の代理人と称する訴外Dが期限前払戻を請求したため、銀行はDに対し、元金と上記合意に基づく利息を払い戻した。上告人は、代理人と称する者への払戻や期限前払戻には民法478条の適用がないと主張して争った。
あてはめ
1. 債権者の代理人と称して債権を行使する者も、債権の準占有者(現:受領権者としての外観を有する者)に含まれると解するのが相当である。2. 本件では、契約成立時に期限前払戻の際の利息等の具体的内容が合意により確定していた。このように弁済の内容があらかじめ合意されている場合には、期限前の支払であっても民法478条の「弁済」として保護の対象となる。3. 銀行がDに対して行った払戻について、銀行が善意無過失であると認められる以上、同条が適用される。
結論
債権者の代理人と称する者への弁済にも民法478条は適用され、本件のような合意に基づく期限前払戻も同条の「弁済」に含まれる。銀行が善意無過失であれば、当該弁済は有効となる。
実務上の射程
準占有者(受領権者としての外観を有する者)の概念を代理人と称する者にまで広げ、銀行実務における期限前払戻の場面でも478条による免責を認めた重要な判例である。答案上は、478条の「受領権者としての外観」の定義を論じる際や、期限前払戻という「弁済」の性質を検討する際に引用する。
事件番号: 昭和54(オ)296 / 裁判年月日: 昭和54年9月25日 / 結論: 棄却
定期預金の期限前払戻を請求した者が、預金証書と届出印鑑を所持しているほか、年末資金として預金の一部を必要とすることと残額を再び預け入れることを申し入れ、払戻請求書に預金者の住所をほぼ正確に記載したなど原判示の事実関係のもとでは、払戻しをした銀行の係員に過失がなく、払戻は債権の準占有者に対する弁済として有効である。