判旨
定期預金契約が銀行の定める定型に合致せず、かつ利息の定めが臨時金利調整法に基づく最高限度を超えていても、直ちに契約全部が無効となるものではない。
問題の所在(論点)
1. 銀行の定める定型に合致せず、かつ臨時金利調整法の制限を超える利息を定めた預金契約の効力(一部無効が全部無効を招くか)。 2. 臨時金利調整法違反の行為について、代理の法理が適用されるか。
規範
契約の一部に法令違反(臨時金利調整法の金利制限超過)や社内規定(預金契約の定型)への不適合がある場合であっても、公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、当該違反のみを理由として契約全体が当然に無効となるものではない。また、強行法規違反の要素を含む行為であっても、代理に親しまない性質のものとはいえず、代理権の行使は認められ得る。
重要事実
上告人(銀行)の担当者Dが、被上告人との間で定期預金契約を締結した。この際、当該契約の内容は銀行があらかじめ定めていた定型に合致しない点が含まれており、かつ約定された利息が臨時金利調整法2条1項に基づく大蔵省告示の最高限度を超えていた。上告人は、これらの瑕疵を理由に契約の無効を主張した。
あてはめ
1. 本件契約が銀行の定めた定型と異なる点があるとしても、それだけで無効と解すべきではない。また、利息の定めが臨時金利調整法に基づく最高限度を超えていたとしても、その一事をもって契約全部が無効になるとはいえない。2. 臨時金利調整法違反の行為は、その性質上、代理になじまない性質のもの(代理に親しまない行為)ではないため、代理権の行使によって効果が本人に帰属し得る。
結論
本件定期預金契約は有効であり、金利制限超過等の事情があっても契約全部が無効になることはない。また、代理人による契約締結の効果は上告人に帰属する。
実務上の射程
取締法規(臨時金利調整法)に違反する契約の私法上の効力について、全部無効を否定した事例として活用できる。答案上は、公法上の制限違反が直ちに私法上の無効を導くわけではないという「法規の目的と公序良俗」の論脈や、一部無効(民法111条の類推適用等)の検討において、全部無効を回避する根拠として引用し得る。
事件番号: 昭和38(オ)681 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
原判決の認定した事実関係(大阪高裁昭和三八年三月一八日判決、金融法務事情三六二号二九頁所収)のもとでは、本件預金契約は、上告人と被上告人との間に成立したものと認めるのが相当である。